第3部
サマンオサ
真実の鏡
[4/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
て、あそこ!!」
私が天蓋を下から見上げて指差す。天井には、一匹の大きな蛾の魔物が張り付いていた。
気持ち悪っ!!
虫は苦手ではないほうだが、いきなり視界に人の顔の大きさほどの蛾が飛び込んできたら驚くだろう。
「いやあああああっ!!」
魔物を直視した途端、シーラの絶叫が部屋中に響き渡った。草原や森の中で遭遇するよりも、こういう場所で見かけるのが一番怖いのはなぜだろう。
バサバサッ!!
シーラの声に反応したのか、蛾の魔物はこの場から逃げるように飛び立った。羽を広げて3倍以上になった大きさの蛾に、シーラは再び悲鳴を上げる。
ベッドの天蓋から飛び出した瞬間、ユウリはナギの方を向いて叫んだ。
「ナギ!!」
「わかってるよ!! これでもくらえ!!」
ナギは持っていたラーの鏡を飛び回る蛾に向けた。
『そ、それは……!! ぐわああああぁぁぁぁ!!』
聞き慣れない叫び声と共に一匹の蛾の姿がみるみる変貌していく。蜃気楼のように揺らめいたかと思うと、蛾は目の前にあるベッドよりも一回り大きい生き物に変化した。
「……それがお前の本当の姿か」
ユウリは口元をひきつらせながらそう言い放つ。いつも余裕の表情で戦闘に挑む彼が、初めて見せる姿だった。
『……油断させて背後から始末しようと思ったのだが、油断したのはこちらの方だったか』
床に着地した『そいつ』は、一見でっぷりと肥え太っていた人間のようなシルエットだった。しかし尖った耳と緑色の皮膚、さらにその大きな口から剥き出される鋭い牙は、到底人間とは思えない出で立ちだ。広々とした寝室が窮屈に感じるほどに大きな体躯は、それだけで相当の威圧感を放っていた。
魔物は血走った目をギョロギョロと動かしながら、すぐそばにあった豪華な洋服ダンスを素手で叩き割ると、崩れた破片から大きな棍棒を手にした。
『わしの名はボストロール。まさかラーの鏡を見つけ出す輩がいるとはな。わしの本当の姿を暴いたのは貴様らが初めてだ』
いくつもの声が重なってぐちゃぐちゃに絡まって引き伸ばしたような、不快感を覚える声で魔物は名乗った。耳まで裂けるほどの大きな口でにやりと笑いながら、魔物は話を続ける。
『今までにも何度か貴様らのような輩がわしの命を狙ってやってきた。だが、誰一人わしに傷を負わせることは叶わなかった。なぜかわかるか?』
「ふん。そんなの、お前より弱いやつしかいなかったんだろ」
軽口を叩くように、ユウリが答える。
『その通り。なぜならわしは魔王軍の中でも四天王の一人と数えられた者!! 人間ごときが敵う相手ではないのだ!!』
魔王軍!? 四天王!? それってサイモンさんたちが返り討ちに遭ったっていう……。
『死ねえええええぇぇぇぇ!!』
思考を中断され、ボストロールが棍棒を振り回しながら
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ