第3部
サマンオサ
真実の鏡
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。
それは他の皆も同様に感じたはずで、一歩前に出たユウリが、畏まった態度で王様の前にひざまずいた。
「安心して下さい。殿下に成り済ました悪しき魔物は、俺たちが必ず倒します」
その力強い言葉に、王様の目から涙が溢れ出す。
「無関係な君たちに頼んですまない……。どうか頼む……」
ユウリの言葉に安心したのか、王様はそのまま目を閉じて眠ってしまった。話すだけで体力が消耗するほど、心身ともに衰えていたのだろう。
「……行くぞ」
王様に背を向け、真っ直ぐに前を見るユウリの目に迷いはなかった。
誰もいない王宮はしんと静まり返っていて、窓の向こうに冴え冴えと光る月が、明かり一つない王宮内を青白く照らしている。
その明かりだけを頼りに、私たちは偽物の王様がいる寝室へと向かっていた。
「そう言えば、さっき王様が言ってた『人間を魔物に変える不思議な杖』って、なんか似たようなことを前に聞いたような気がするんだけど」
王様がいる牢屋を出てから、私はさっきから気になっていたことを口に出した。けれど誰一人ぴんとこない様子。やや間を置いて、ユウリが何かを思い付いたように立ち止まった。
「そう言えば……、スーの里のエドが似たようなことを言ってたな」
「あっ、そうそう! それだよ!」
エドとは、サマンオサの北の大陸にあるスーの里で出会った、人の言葉を話す白い馬のことだ。
確か三賢者の一人であり、元は人間だと言っていた。そして、自分が作った『変化の杖』を魔物に奪い取られ、元の姿に戻れなくなったと言っていたが――。
「もしかして、エドの杖を奪った魔物って……」
「ああ。そいつがこの国の王に成り済ましてるのかもしれないな」
スーの大陸とサマンオサの大陸は別の領土だが陸続きなので、その魔物が行き来してもおかしくない。
「なになに? エドって誰?」
「あー、話すと長くなるからまた今度ね」
そう言えばシーラたちにはまだエドのことを話してなかったんだった。きっとエドの姿を見たら二人ともびっくりするんじゃないかな?
大広間を通り抜け、二階へと上がる階段を上り終えると、扉があった。ユウリ曰く、普通のお城なら夜でも見張りの兵士が立っているそうだが、扉の前には誰もいなかった。
扉を開けるユウリの後を黙ってついていくが、その向こうにある広い廊下もまた、明かりなど一つも点いておらず真っ暗だった。
左右にいくつか扉があるが、廊下の突き当りにひときわ大きな扉があった。3人によると、ここが玉座の間だという。
ああ、いざ近くまで来たら急に緊張してきた。
「どうしよう、王様の寝室に忍び込むなんて初めてだから、心の準備が……」
「アホか! オレら全員初めてだっつ―の!」
私の気持ちを遮るように、横からナギが即座にツッコミを入れる。
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