第83話「土星沖海戦」パート4
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る艦が1隻いた。
「〈アンドロメダ〉ッ、艦首下部を損失し徐々に重力に引き込まれています!」
アンドロメダ級1番艦〈アンドロメダ〉である。オペレーターは続けて〈アンドロメダ〉大破の報告をする。それに〈アポロノーム〉の艦長である安田は敏感に反応し、〈アンドロメダ〉の姿を画面越しで確認した彼はゴクリと息を飲んだ。
総旗艦〈アンドロメダ〉は、あの堂々たる戦女神の姿を失っていた。波動砲の発射機構がある艦首下部が破損し無くなる程に。
航行不能に陥る一歩手前にあり、その証拠に〈アンドロメダ〉は重力に逆らえずに引き込まれつつあった。
彼を失う訳にはいかない。安田は直ぐに指示を出した。
「機関長、最大出力を維持できる時間は!」
「ワープ出力なら多く見積もっても三〇秒とちょっとであれば……」
「十分だ、航海長!本艦左舷を〈アンドロメダ〉右舷に接舷させろ。そのまま出力最大で〈アンドロメダ〉を押し上げる!」
『──!?』
それはつまり、自分らは犠牲となって〈アンドロメダ〉を助けるという事。誰もが驚く中で副長が安田の命令に率先して頷いた。
一人また一人と安田へと頷き、安田からの命令を復唱し行動に移った。
「…すまない」
安田は誰にも聞こえることはない小さい声音で、感謝の意と謝罪を言葉にした。
波動砲口が大破しエンジン出力が低下傾向となり、最早これまでかと感じ取った山南であったがそんな時、艦首右舷側に衝撃がやって来たのだ。
「〈アポロノーム〉、接触!」
山南が顔を上げたと同時に映像通信が入り、モニタに投影される。
『山南総司令、行ってください!』
「安田、艦長……」
『我が〈アポロノーム〉は残る出力で〈アンドロメダ〉を押し上げます!』
「・・・」
あくまでも、職務を全うする軍人としての顔で、山南に提案する安田。
しかし山南は彼の行動に唖然としていた。何と言葉を発して安田に送ればいいのか分からない。〈アポロノーム〉の…安田が今していることのそれは…。
そんな山南の表情を見た安田は、素で最期の言葉を送る。
『山南総司令……山南、お前は最善を尽くした』
「や、安田…!」
最善を尽くしただなんてやめてくれ。俺は、俺は…! だがその山南の想いを口から出せることが出来ず、ただ彼の…親友の名を呼ぶことしか出来ないでいた。
『健闘を祈る!』
安田は姿勢を正し敬礼した。それが区切りであるかのように映像通信が終わった。
そうして数分もしない内に沈降していた〈アポロノーム〉は10以上もの破滅ミサイルからの攻撃により……爆沈した。
「安田……!」
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