第二部
第一話
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玄関のドアを開ると、そのまま道路に出て百メートルほど先の自販機へと歩き始める。その道中、幼波染みが住んでいる家があったのでふと玄関を見ながら前を通り過ぎて行く。
しかしその途中で彼の足はぴったりと止まってしまった。
玄関の前では体を震わせながらしゃがみこむ幼馴染の姿があった。彼女の目の前には小さな子犬が眠っている。どうやら世話をしているようだ。
「おい由莉香! 何やってんだよ!」
声をかけてみると、由莉香は悪気のない笑顔を向けてきた。
「あ、俊司君」
「あ、じゃねぇよ! 小5になってなにわけのわかんねえことしてんだって!」
「子犬の面倒見てるんだ」
そう答え由莉香は子犬をひょいっと持ち上げると俊司に手渡す。その子犬はというと、この日の下校中偶然見つけた捨て犬だった。由莉香曰く親に頼みこんでこの子犬を飼うことにしたらしい。にしてもこんな時間に一人で子犬を世話しているのはどう考えてもおかしかった。
「それ……親には言ったのか?」
「抜け出してきちゃった」
「お前なぁ……」
少女は何の悪気もないのか、呆れたままの俊司の顔を見ながらずっとニコニコしていた。
とにかく由莉香に寝るように注意して見るが、こう見えて頑固な彼女は言うことを聞こうとしない。それどころかこの時間でも起きている俊司はどうなんだと言い始め、へたにい返せなくなっていた。
しかしどれだけ言おうが体は徹夜できるほどの体力があるわけがない。俊司と話している途中も、由莉香は何度か欠伸をしていた。
「ほら〜。やっぱ眠いんだろ?」
「眠たくな……ふわぁぁぁ」
否定しつつも大きく欠伸をする由莉香。俊司はそんな彼女に呆れながらも何とかしようと試みる。
「……はぁ。わかった。じゃあちょっと目をつむってろ」
「えっなんで?」
「いいから!」
「は〜い……」
俊司に言われるがまま目をつむり静かになる由莉香。俊司は着ていた服の上着を脱ぐと、スッと由莉香の背中にかけた。
それから数分後、由莉香は静かに寝息をたてながら眠っていた。俊司は呼び鈴を鳴らし後のことを由莉香の親に頼んだのち、ジュースを買う気もうせてしまったのか、深く溜息をつきながらそのまま家に帰っていくのであった。
そして現在似たような出来事が起きて約2・3時間後、つい居眠りをしていた少年はふと目をさました。依然と妖夢は肩に顔をのせたまま眠っている。
「……あれ? 俺も……寝てたのか……」
「ええ。案外かわいらしい寝顔だったわよ?」
「えっ……!」
目覚めたばかりの彼に聞き覚えのある声がかけられる。そこにいたのはさっきまで眠っていたはずの幽々子だった。
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