八十七 対話
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つくられているが故に、幹の紙を手で掻き分ける。
偽樹木の洞の奥。暗がりに潜む存在に、ナルは一瞬、息を呑む。
意を決して足を踏み入れた彼女を見て、長門は冷酷に歓迎した。
「平和がノコノコやってきたか」
樹洞で木ノ葉の仇敵と対面する。
里を壊滅させた元凶を前に、波風ナルの心情は酷く波打っていた。
会って話したかった。それも本当。
直接対面して確認したかった。それも本当。
自分の気持ちを確かめたかった。それも本当。
だけど、どうしても。
抑えきれない感情が此処にはある。
憎しみと恨みで爆発しそうになる彼女の心を落ち着かせたのは、長門のもとへ向かう前に会った元祖・猪鹿蝶の三人。
シカクが言った言葉が、ナルの高ぶる感情を冷静にさせる。
『おまえを信じている』
折しも、九尾化したナルの封印を再度封印してくれた四代目火影の言葉。
自分の父親の一言と同じその言葉が、ナルを正気でいさせてくれる。
深く深呼吸して、ナルは改めて、ペイン六道の本体を見据えた。
「答えを出す為に、話を聞きたい」
過去の話を求めるナルに、小南は渋ったが、長門は思案する。
ナルの真剣な眼差しを受け、承諾しようとしたその時。
「そのお話…僕が聞いても大丈夫な話です?」
不意に暗がりから、第三者の声がした。
気がつかなかった。
ペイン本体である長門と、彼に付き添う小南にばかり気を取られていて、奥の暗がりにもうひとりいたなんて。
ハッと弾かれるように身構えたナルは、暗がりから姿を露にしたその姿に、一瞬、呆けた。
直後、沸々と怒りが湧き上がる。
なんとか沈静化した憎しみ・恨み・憤りが再び、抑えきれずに彼女の中で膨れ上がった。
「おまえ…ッ、」
長門と小南がなんでもないように振舞っていることから、ふたりは知っていたのだろう。
むしろずっとこの場にいたのだ。
気配を消すのが上手すぎて気付かなかった。
いや、ペイン本体に気を取られて気づけなかったナルの落ち度だ。
それでも。
それでも。
「なんで此処にいる…ッ!?」
怒りが爆発しそうだ。
再び九尾化しそうな気配を感じ取って、身構える長門と小南をよそに、飄々とした顔で彼は眼鏡を指先で押し上げる。
大蛇丸の部下であり、サソリの部下でもあり、『暁』の一員である男。
『暁』に入ったサスケと共に、大蛇丸のアジトから消え去った、ナルにとって憎き敵。
そして現在、長門の体調を診る医療忍者として同行していた薬師カブトは、依然と変わらず人当りの良い笑顔をにこり、浮かべてみせた。
「――久しぶり、ナルちゃん」
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