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冥王来訪
第三部 1979年
迷走する西ドイツ
暮色のハーグ宮 その3
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プスブルグ家から地元の有力貴族が総督に任命され、間接統治を任されていた。
 その為、蘭王室には、強大な王権がなく、この王宮も別荘地として建てられた。
 故にベルサイユ宮のような行政機能はなく、豪華さは一切ない。
18世紀に改装されたが、費用面からバロック形式の庭園が見送ら、未建設のまま終わった。
(なおバロック形式の庭園は、後日、日本の佐世保で作られた「ハウステンボス」で日の目を見ることになる)

 車列が鬱蒼(うっそう)とした森に近づくと、高い塀に囲まれた建物が目に入ってくる。
この一帯は、ハーグの森と呼ばれるオランダ最古の森で、およそ100ヘクタールほどある。
 16世紀以降に開発が進み、オランダ国内から森林は消えてしまった。
今は、このハーグの森とハーレムの森に残るわずかな緑地が、オランダの自然の一つであった。
 マサキ達は、宮殿に入ると各部屋を手分けして探すことにした。
王配殿下からどこで引見するという指定を受けていなかったからだ。
 そうこうする内に、大広間にたどり着くと、一人の偉丈夫が立っていた。
黒いダブルのスーツに、水色のワイシャツ、紺のネクタイを付けた男こそ、マサキが探し求めた人物であった。
「フフフフ……天のゼオライマーのパイロット、木原か……
こんな青二才に振り回されるとは……」
 王配殿下は、それまで燻らせていたシガー・オリファントを投げ捨てる。
インドネシアの高級葉タバコ「ジャバノ」を使用した葉巻を、さも紙巻煙草の如く踏みつぶした。
「西ドイツの大統領は引退し、政府はばらばらになった。
内閣は私の手足となった者たちが次々と辞職に追い込まれた。
GSG-9の急襲も無駄だったようだな……
科学者の一途(いちず)な執念がこれほどまでとは……知らなかった」
マサキは、ぶっきらぼうに訊ねた。
「どうして、俺を呼んだ」
「にくい黄色猿が殺したくてな」
 王配殿下は、懐中から銀色のオートマグを取り出し、マサキの方に向ける。
マサキは動じることなく、不敵な笑みを湛えた。
「撃てるなら、撃ってみろ。
でも俺を撃てない。
貴様にとって、俺の様な悪党が羨ましいからだ!」
 しかしそのとき、広間に、銃声が揚った。
ビュンッと、一弾、風を切って、彼の面と柱のあいだを通った。
ブスッと、そこらの家具にも、銃弾のもぐる鈍い音がした。
 マサキは咄嗟に、近くにある鋼鉄製の暖炉に身を隠した。
 連続した自動拳銃の発砲音が耳朶に響く。 
何が起こっているか、判らない。
 M29リボルバーと、2つの六連発スピードローダーを準備する。
頃あいを計って、反対側の敵へ、銃を揃えていちどに弾丸を浴びせる。
 数発の銃声の後、どたッと、地ひびきを立てて人が倒れる音がする。
 離れた場所から、恐る恐るみ
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