第106話 憂国 その6
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らい強力な雑草だ。竹と言ってもいい。人の見えない地面の下で、畑を林に変える機会をうかがっている。現時点で地表には姿を現してはいないがね」
「地下茎は元となる竹林から流れてきます。まずはそちらの手入れからするべきでしょう」
「ところが竹もそれなりに有用な資源でもある。ハッキリと分断するには、残念ながら距離が近すぎるんだ」
「狭義の意味では竹と笹は区別されますが、基本的には同じ種です。急成長する竹ばかりに目が行って、笹が実を付けていることはご存知ではないですか?」
「ネズミが増える。そう言いたいのはわかるよ。彼らが病原菌をバラまく可能性があるのもね。だが同じ齧歯類でもハムスターなら問題ない。それにハムスターが居ると、ネズミは家に寄りつかなくなるよ」
フェザーンからくる凶悪な地球教徒をハムスター扱いとは恐れ入るが、『飼いならせる』理由が何処かにはあるのだろう。だがチェン秘書官が俺に囁いたサイオキシン麻薬の頒布の事実。正しいか間違っているかは、旧職に縁が深い怪物ならば当然理解している。
原作では同盟国内におけるサイオキシン麻薬の流布についての記述は、地球教本部やオーディンなどの支部それにカイザーリング艦隊など話題に事欠かない帝国と比べて少ない。警察とマスコミの支配を自己の政治生命維持に費やしていた怪物だが、地球教徒を利用はしても麻薬の頒布は行わせない程度の分別はあるということか。
それに帝国の憲兵隊のようなある意味超法規的な武装集団のいない同盟にあって、警察畑の怪物が、麻薬の撲滅のために帝国の治安組織とすら手を組んだことを知らないわけがない。
「小官はサイオキシン麻薬を頒布したり、無理やり使って人を従わせるような人間を、人間とは思っておりません。犬畜生にも劣ると思っております」
「当然だね。この国においてそんな蛮行は決して許してはならない」
一〇〇点満点の回答のように聞こえるが、帝国やフェザーンではどうでもいいと言っているに等しい。あくまでも同盟国内で地球教徒が?茂しようが、自分の立場や国内治安を揺るがすような行動をとらないのであれば黙認するし、その行動指針を逆手にとって利用してやろうとも思っている。正直溜息しか出てこない。感情を消した俺の三白眼と、魅了の魔力を持つ人の良さそうな怪物の眼差しが、料理の上で衝突する。俺も奴も、スムージー以外には手を付けてはいない。
だが視線の衝突は一〇秒も持たずに、扉のノックで破られる。いかにも途中で席を離れて悪いねと言った笑みを浮かべたトリューニヒトは立ち上がって扉を開くと、そこには先程までの余裕を失った悪霊殿が立っていた。
一言二言。内容までは聞こえないが、少し非難を含んだ口調で悪霊が怪物に何かを告げている。ようやく「結果」が届いたのだろう。治安警察の小隊長殿の肝っ玉が小
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