第三章
[8]前話
「一目見てです」
「好きになったか」
「その姿が」
「そうであったか」
「しかも戦までして私を連れ戻すとは」
このことも言うのだった。
「そこまで想う位愛情が深いなら」
「それならか」
「尚更です」
こう言うのだった。
「私としては」
「望ましいか」
「はい、それでは」
「冥界に行くか」
「そうします」
ネルガルは父神に答えそうしてだった。
冥界のしきたりを自分から学んだ、それを聞いてだった。
エレキシュガルは冥界でだ、宰相である長い髭を持つ老人の姿をした神ナムタルに対してこう言った。
「そこまでしてくれるとは」
「エレキシュガル様としても」
「いいわ」
笑みを浮かべて言った。
「とてもね」
「左様ですか」
「彼は私を見て一目で気に入った様だけれど」
「エレキシュガル様もですね」
「そうであってね」
それでというのだ。
「彼が冥界のことを学んでくれるなら」
「それならですね」
「尚更よ、それではね」
「あの方をですね」
「冥界の神、私の夫神に迎えて」
そうしてというのだ。
「そのうえでね」
「共にですね」
「冥界を治めていくわ」
こう言ってだった。
エレキシュガルはネルガルを迎える準備をした、そして彼女とネルガルのやり取りはナムタルが受け持ったが。
かつては酔って喧嘩をした彼とネルガルであったが。
和解してすっかり打ち解けてだ、そうして親しくする様になった。そのこともあって二柱の神々は尚更惹かれ合い。
ネルガルはいい頃合いになると冥界に入りエレキシュガルと結婚した、そして共に冥界を治める様になった。古代メソポタミアの神話の一つである。冥界は今もこの二柱の神々によって収められているという。
女王神との愛 完
2024・5・12
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