第3部
サマンオサ
もう一人の勇者
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それでもなんとか通り抜け、やっと歩けるくらいの場所までたどり着くことができた。
かび臭い匂いが漂うこの場所は、地下通路でも見た景色だ。どうやら牢屋のある場所は近いらしい。
しばらく歩いていくと、階段が見えてきた。それを降りると、遠くで小さな明かりが灯っているのが見えた。
「この先の牢屋に、あいつらがいる」
明かりがあるところまで進むと、やがて前方に鉄格子が見えた。一つだけではなく何部屋もあり、どの牢屋にも数人の罪人らしき人が入れられていた。中には老人や女性もおり、とても罪を犯すようには見えない人々であることがわかる。彼らはこちらに気づくこともなく、ただ暗い目をしながらぼんやりと宙を眺めていた。
そして、しばらく歩いたあと、急にナギが立ち止まった。その瞬間、聞き慣れた声が耳に届いた。
「ナギちん!! お帰りなさい!! ねえ、ミオちんは!?」
「お前らの期待どおり、ちゃんとラーの鏡を見つけてきたみたいだぜ」
そう言うとナギは、鍵がかかっているはずの牢屋の扉を事も無げに開けた。いや、そもそも最初から鍵などかかっていないようだ。
手招きするナギに誘われてすぐさま中を覗くと、そこには若干やつれた顔をしたシーラと、相変わらず無愛想なユウリが部屋の隅に座って待っていた。二人の姿を認めた瞬間、私は出会えた嬉しさのあまり、一気に涙が溢れてしまった。
「シーラ!! ユウリ!!」
「ミオちん!! 会いたかったよぉ!!」
がばっ、とお互い抱き締め合う私たち。夕べ会えなかっただけなのに、何年かぶりの再会のように思えてくる。そう感じるのは涙を流しているシーラも同じだった。
「……遅い。待ちくたびれたぞ」
相変わらず毒舌なユウリだったが、よく見ると彼の表情も疲労の色が濃い。この二日間ずっと牢屋の中にいたのだ。無理もない。
「会えてよかった……。約束どおり、ラーの鏡を持ってきたよ」
「ホントに!? すごいよミオちん!!」
私は鞄からラーの鏡を取り出すと、三人に見せた。鏡に映し出された三人の顔はそのままだ。
「それにしても、よく手に入れられたな。あの落書きみたいな地図で目的地まで行けたのが信じられねえよ」
「それ自分で言う? 描いたのナギだよね?」
「そうだけど、実際に行ったことのない場所の地図描けって言われたら、誰だって落書きみたいになるぞ」
確かにナギの言う通りかもしれない。私はこれ以上文句を言うのをやめた。
「と言うか、私一人じゃ目的地に着くことも出来なかったよ。ルークが一緒について来てくれたから手に入ったようなものだもん」
ね? と言ってルークに同意を求めると、それを合図に三人が一斉に彼に注目したからか、ルークは恥ずかしそうに目を伏せた。
「いや、ミオがどうしてもあの洞窟に入るって言うから仕方なく行ったけど……
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