第54話「ほほう…」
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は、秘匿され続けていた《プランA》と《時間断層》を目の当たりしている。彼らは、驚きよりも怒りを覚えているのだ。その内の一人、島大介が口を開く。
「とんでもないものを見てきたな」
元〈ヤマト〉クルーである島は、帰還後は輸送艦隊に勤務していた。輸送という文字があるように、物資を輸送する仕事に就いているのだ。そんな彼は、これまで運んでいた物資の内の何割かが消えていることに気づいた。当初は横流しではと疑っていたが、その通りだった。《時間断層》に流れ、飲み込まれていたんだ。
島に対し、古代は頷く。《時間断層》で見た光景が脳裏に浮かび上がってくる。波動砲艦が乾ドッグに並び、建造される波動砲艦。波動砲を搭載しない艦艇は一切無かった。波動砲艦隊計画は、実在していたのだ。
「波動砲艦隊計画、か…」
南部の表情は暗い。彼の実家―――南部重工は、アンドロメダ級の建造計画に関与している。自分の父親が《時間断層》の全容を知っているかは分からないが、仮に知らないとしても違和感くらいは感じる筈だ。いや、知っていたとしても、自分に教えてくれる筈がない。南部は、内心で自嘲する。父との関係は、士官学校時代から良好ではないのだから。
「真田さんは、この情報をいつ知ったんですか?」
暗い表情を浮かべている南部の隣で、相原が男―――真田志郎へ問いかけた。真田は〈ヤマト〉で技術長兼副長を務めていた男だ。英雄―――沖田十三の懐刀でもあり、科学解析・情報分析・開発・工作を統括する他、艦長の沖田が持病の悪化などで艦の指揮を執れなくなった際には、彼に代わって指揮を執っていた。
真田は〈ヤマト〉を見上げると共に、語り始めた。
「―――中央に留まれ、…土方さんは去り際にそう言った。私は、少しでも情報を集める為〈ヤマト〉の再改造を引き受けた」
しかし、と真田は続ける。
「《時間断層》の存在を突き止めたところで、大きな流れを阻止することなど…っ」
土方が更迭され、辺境の第11番惑星への勤務となった。地球連邦政府にとって波動砲艦隊は、既定路線だ。これからの時代は、波動砲艦隊が必要不可欠だから。生き残る為に、政府は選択した。その選択はイスカンダルの愚行にならないとは限らない、真田はそれを危惧しているのだ。徳川や山崎、榎本も同じ想いで、彼と共に行動していた。しかし、大きな流れを阻止することは出来なかった。
「結局、我々は負けたんだ」
それはどういうことなのか、古代が真田に問いかけると彼の代わって徳川が返答した。
「本日付けで、元〈ヤマト〉のクルー全員に配置転換命令が出たんじゃ」
「!?」
古代は絶句し、思わず仲間達の顔を見渡してしまう。俺のせいなのか、と俯きそうになったところを島が気遣う。
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