第53話「テレサと、地球の真実」
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と、絞り羽根さながらに分割された壁が回転し始めた。フライホールを想起させる動きで、回転は徐々に速くなっていた。
ふと、古代は水滴の動きを見て異変に気づいた。これは、明らかに”遅くなっている”。
「リバースシンドローム。此処は、そう呼ばれている」
今も異様な光景があるというのに、キーマンは冷静だった。
「リバースシンドローム…?」
リバースだけを日本語に訳すと逆転する・反転する、という意味。何故、此処はそう呼ばれているのだろうか。オウム返しする古代に、キーマンは振り向くことなく問うた。
「ガミラスの流星爆弾により破壊と汚染されたこの星を、甦られさせたものは何だ?」
今更だな、と思いつつも返答する古代。
「コスモリバース―――」
システムを言おうとした時、ハッと気づく。古代は今、自分が口にした単語に驚きのあまり声が出ない。彼に対し、前を向いているキーマンは目を細める。
「未知の技術には副作用が付き物だが、こいつは度を越している」
その時だ。音が止み、回転が停止した。それだけではない。ポタポタと降る水滴や舞う水滴もが、まるで時が止まったかのように静止していた。だが、目を凝らせば僅かとはいえ動いていることから完全静止ではないようだ。
「このスケールシリンダーが無ければ、人間は10分と保たない」
古代とキーマンは、突き当りに達した。眼前には、入口と同じタイプの扉がある。この扉の先に、地球の真実がある。直感的に、古代はそう感じた。扉は汚れ、腐蝕すらあった。つい先程に潜った入口には無かったものだ。手入れがされず捨て置かれたかのようだが、装置―――開閉パネルのボタンは生きていた。キーマンが人差し指でタッチすると、開閉パネルが点灯した。
ゆっくりと、扉が開かれていく。
「…!」
瞳に映る光景に、古代は扉を完全に開くのを待てなかった。キーマンを押し退け、左右に開く扉の隙間を通り抜けるや駆けた。
古代の瞳に映る世界は、組み立てかけの立体パズルを思わせる世界だった。複雑な形状をする巨大な建造物と切り立つ海面が、それぞれの面にテクスチャのように存在していた。海面は先程の滝のように逆流している訳ではなかった。面に沿って時には横、時には縦に這うような動きをしている。
スケールシリンダーの出口に続くのは長いキャットウォークで、それは巨大な建造物に向かって繋がっていた。
「これは、いったい…?それに、此処は…?」
唖然とする古代に、無理はないといった顔を浮かべたキーマンは告げる。
「地球だ。此処は、甦った地球が美しい自然の裏で密かに抱え込んだ闇。コスモリバースシステムというブラックボックスが生み出した特異点だ」
そう
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