第48話「就役式典」
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受け取った。銀の斧は12月の柔らかな陽射しを受け、鋭く光っていた。彼女はそのまま演台の一角に設えた支網へと向き直り、銀の斧を勢いよく振り下ろした。支網が、切断された瞬間だ。
支網が切断されると、二番艦〈アルデバラン〉、三番艦〈アポロノーム〉、四番艦〈アキレス〉、五番艦〈アンタレス〉、に祝い酒瓶が叩きつけられる。ガラス製の砕ける音と共に、くす玉が割れた。4隻の新鋭戦艦の舳先に、誕生を祝う大量の紙テープと紙吹雪が舞う。
刹那、割れんばかりの歓声が湧き上がった。支網は酒瓶やくす玉に連動しているだけではなく、滑走台の射出機構にも連動していた。アンドロメダ級4隻の舳先が、ゆっくりと動き始めた。同時に、だ。
歓声は今もなお湧き上がっているが、藤堂は肌で感じながらバレル大使へ地球の立場を訴える。
「今の地球の人口は、往時の三分の一。デスラー体制の崩壊により国が乱れていようと、ガミラスがその気になれば侵略するのは容易です。無論、もうそのようなことは起きないでしょうが」
アベルト・デスラー。
永世総統として君臨し国家を恐怖で支配していた男だが、それはもう過去の事。何故なら指導者アベルトが座乗していた〈デウスーラU世〉は、〈ヤマト〉との戦いで爆沈したからだ。今のガミラスは、恐怖支配から脱却しているのだ。
「疑心暗鬼、という言葉は我々ガミラスにもありますよ。何事にも、バランスが必要です」
バレル大使は、なおも藤堂の顔を見ることは無かった。彼は続ける。
「波動砲で国力の差を埋めるおつもりならば、危険な火遊びであると忠告させていただきます」
地球連邦の同盟国はガミラスとブリリアンスの二国で、どちらも一つの銀河系を支配する勢力。国力で劣っている地球連邦は波動砲を、ガミラスとブリリアンスとの国力差を埋める為の”道具”として扱っている。バレル大使はその事を、忠告しているのだ。
「恩人であるイスカンダルの約束を反故にしてまで―――」
しかしそれを芹沢は遮り、一蹴する。
「そう、あれは一宇宙戦艦艦長の沖田十三がした単なる口約束に過ぎない。条約でも無いし、地球の意思でもありません」
「……」
一同の視線が、アンドロメダ級4隻に向けられる。
船体を支えるガントリーに固定されていた鎖が勢いよく引かれると、観客席の下から4隻のアンドロメダ級が押し出され、スローブを滑っていく。滑走台と電磁レールが触れ合い、火花を生んだ。やがて、アンドロメダ級4隻の全貌が見えてきた。2隻は戦艦型で、残る2隻は空母だ。
スローブを下りきり滑走台は海面に入ったことで、補助エンジンの噴射が水飛沫を上げさせた。進水を終えたアンドロメダ級4隻はそのまま速度を加速させ、ジャットコースターの如く数キロ先に
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