暁 〜小説投稿サイト〜
現実世界は理不尽に満ちている!
第46話「〈ゆうなぎ〉」
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突入し始めており、赤熱化した大気が纏わりついていた。

 200秒…190秒…180秒…、首都落着までの予測時間を電探士が報せる。モニターには、落下軌道と共にカラクルム級を示す表示が刻々と位置を変えている。

 頼む、と祈った瞬間。地球の海中から、三本からなる青い光の矢がカラクルム級へ向かう。束となった青い光の矢―――陽電子衝撃砲の束がうねるように海水を突き進み、水蒸気と共に海水を波紋さながらに吹き飛ばす。陽電子衝撃砲の束が天へ向かい一直線に駆け上がる。やがて、カラクルム級に吸い込まれるように突き刺し、真正面を射抜いた。艦尾まで貫かれたカラクルム級は次の瞬間、大きな火の玉と化し爆発四散する。た〜まや〜、である。

 「やった、のか…?」

 「あぁ、やったんだ!」

 歓喜の声が艦橋を包む最中、古代は衛星から転送されたモニターの映像を凝視していた。海面の一角に立ち込めた水蒸気の向こうに、防波堤に囲まれた海底ドックが確認出来る。海底ドックは透明なグラスドームに覆われていたのだが、その中にあった海水は陽電子衝撃砲の発射により蒸発している。

 引き裂かれたグラスドームの中に、横倒しとなって浮かぶ”あの艦”がいた。古代は、”あの艦”の名を口にする。

 「宇宙戦艦ヤマト」

 真田の指揮の元、あの艦―――宇宙戦艦ヤマトは、この海底ドッグで改装中だった。船体には装甲が外れている箇所もある中、危機を知り、三連装主砲を撃ったのだ。

 不意に、1年ほど前の出来事が脳裏を過る。

 ―――古代、現実を見ろ。

 イスカンダルで交わした約束により、〈ヤマト〉の艦首には《封印》が施された。スターシャは地球を救う約束を果たす為、コスモリバースシステムを自分達に託した。〈ヤマト〉そのものをコスモリバースに改造し、地球へ帰還させる。そうでなければ、地球を救うことは出来ないからだ。改造にあたり艦首の波動砲発射口に蓋をし、《封印》された。その《封印》こそ人類がイスカンダルの轍を踏まない証なのだと、古代は信じていた。

 だが、《封印》は、〈ヤマト〉の艦首から消えている。既に地球は、沖田が交わした約束を違えていた。だから、自分はあの時…。グッと拳を握りしめていたその時だ。

 「こ、これは…」
 
 突然と、世界が色を転じた。艦橋も無く、南部や相原を始めとする環境要員の姿も無い。息づかい、計器、機関から伝わる僅かな唸りすら聞こえない。星々の輝きもなく、あるのは暗闇だけ。ただ、艦長席に座る自分だけがいる。古代は見渡し、席から立ち上がる。

 正面に視線を戻した古代は、つい先程まで視界に無かった男の背中を見た。自分と同じ、艦長の地位を示す黒いコートを着ている。古代は違和感を覚えた。暗闇であるというのに、男の背中がくっきりと見えている
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