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現実世界は理不尽に満ちている!
宇宙戦艦ヤマト2202
第40話「”彼女”は祈る」
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型の針に貫かれ、ものいわぬ屍と化した。生命活動の終了を確認完了した機械人形の軍勢は、その屍の上を通り過ぎていく。

 ズォーダーは瞑目し、呟いた。

 ―――虚しい、実に虚しい。彼らの命に、なんの意味があった。その苦痛に報いる、どんな意義が人の生涯にある。
 
 聖域の最奥部は巨大で頑丈な扉で閉ざれていた。機械人形の軍勢は針を打ち出したが、その扉の表面に、ほんの僅かな傷を負わせるだけに終わった。機械人形は突進しての体当たりを繰り返すが、徒労に終わる。

 ―――死は終わりにあらず!

 聖域に立て籠もっている者達―――老齢の男女、若い男女、子供は唱和し続ける。

 ―――ふっ。
 
 なるほど、と大帝ズォーダーは合点する。異常なまでに頑丈なこの扉は、聖域の最奥部に立て籠もる者達の念で守っているのだ。

 ―――死は終わりにあらず、か。…なんと無意味。

 薄く目を開けた薄く目を開けたズォーダーは、王座の間に巡らされた廻廊へと視線を投ずる。大帝の顔を、臣下の者達が畏敬を込めた瞳で見上げていた。

 ズォーダーは自身と同じ肌をする臣下の中で、ただひとりだけ肌の色が異なる女へと目を留めた。透明感のある橙と長い白銀の髪を持つ美女。

 ―――大帝、全ては御意のままに。

 丞相という地位に就き《白銀の巫女》と呼ばれるシファル・サーベラーは、深々と頭を垂れた。他の重臣達を尻目に、彼女は指示の手を上げる。

 扉が、いや、聖域の最奥部そのものが揺れる。その揺れを確認した立て籠もっている者達の唱和を鈍らせた。扉に巡らせていた念が緩み、軋み、分厚く頑丈な扉は赤熱化していった。
 扉は真っ赤になると同時に融けだし、融解した扉からやって来る紅蓮の炎が最奥部を舐めた。

 ―――やはり、愛が必要だ。

 ゆらりっと王座から立ち上がるズォーダー。居並ぶ臣下達は威儀を正した直後、彼の目の前に三角形の投影モニターが出現し、万華鏡さながらに展開する。モニターには、対峙する星の全容が映し出されていた。

 宇宙空間に、青い水の惑星が浮かんでいる。リボン状の光が覆い、惑星全体がぼんやりと渋い。ズォーダーはその青き惑星を観つつ、言葉を紡ぐ。

 ―――この宇宙から根こそぎ苦痛を取り除く、大いなる愛が必要だ。

 フッと嗤ったズォーダーは続ける。

 ―――そうは思わんか、テレサ?

 ズォーダーは、彼女―――テレサが視ているのを知っている。彼だけではない。重臣達もテレサの存在を認識している。

 テレサは思う。

 私の存在を認識しているのは、彼らの計測機器が多様体として記録しているからだろう。私の存在する次元をこの宇宙の次元として表現した、複雑な折り紙のような図形。それは元の次元へ押し返そうとする力との
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