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東方守勢録
第五話
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「うぐっ!?」
 クルトは弾丸を放った瞬間背中に強烈な痛みを覚え、抑え込みながらゆっくりと膝をついた。軍人のクルトならこの痛みの正体は何となく理解できる。どう考えても弾丸が肉体を引き裂く痛みだ。それを見ていた紫も一瞬何が起こったかわからず、呆気にとられたうずくまった彼を見ていた。
(なぜ? 私は完全に彼の頭を……!?)
 顔をあげた瞬間、クルトは体中から血の気が引いていくように感じた。
 銃口を彼に向けて弾丸を発射するまでは、彼は死を覚悟したままあの場所に立っていたはずだ。だが今になっては彼が倒れている姿どころか、立ってこちらを見る姿もない。それに今の状況を考えてみると、確実にこの攻撃は彼からのものだ。それにご丁寧に背後から腹部を狙い撃ちしている。
 恐る恐る振り返ってみると、そこには彼の予想通り前に立っていたはずの少年が銃口をこちらに向けたまま立っていた。痛む体に無理やり鞭を入れ起き上がると、持っていた銃をホルスターにしまい無理やり笑みを作り出す。
「これは……なんのマジックですか?」
「生憎俺はマジックの心得なんてありませんよ」
 俊司はクルトを睨みつけたままそう答えた。
 クルトには彼がなぜ攻撃をかわし一瞬で背後に回れたのか大体理解していた。ただの外来人だった彼が急に瞬間移動できるわけがないし、それをしようとした仕草も見当たらない。窮地に立たされた少年が偶然能力を発動させてしまったのだろう。
「土壇場で能力開花ですか……へんな運をお持ちで?」
「昔から運が悪いって言われてましたけど……変ですね」
 からかうつもりで言ってみるが俊司はそれに動じることはない。完全にさっきの攻撃のせいで流れが一変しており、クルトにとっては不利な状況になっていた。それに傷口からはまだ血液が流れ出ているし、このまま無駄に戦っても死を早めるだけだ。
 撤退すべきだとクルトの本能が彼に呼び掛ける。幸い紫を補足していたため彼女を置いて追い掛けてくることはないだろうが、念には念にということである細工を施すことにした。
「フラッシュバンか!」
 クルトが背後に手をまわしたのを見た俊司は、外の世界で目くらましに使うフラッシュバンという武器を連想させた。軍人であるはずの彼なら、一つや二つは持っていてもおかしくはないはずだろう。
 しかし彼は予想通りと言わんばかりに鼻で笑うと、呆れたように話し始める。
「残念だが、私はそれは嫌いなんだ。最後に一つ……また会おうぜ? 未来の英雄さん」
 クルトはからかっているのかそんなことを言って笑みを浮かべた。何を言ってるのかわからずキョトンとする俊司。
 しかし笑みを浮かべた彼の足元には、すでに半透明の魔方陣が浮かび上がっていた。
「何をふざけて――」
「魔法は設置して最短で10秒あれば発動するんだぜ?」
 そう言
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