第五話
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能力なのだが問題があった。
「俊司君自身は能力を発動したっていう感覚はないのね?」
「……はい」
能力を発動した覚えがないのは少しおかしい話だった。紫達でさえどんなに不慣れでも能力をコントロールして使うことはできる。自然に発動できる能力と言うのは聞いたことはなかった。それに問題はそれだけじゃない。
「一応あなたの能力を使えばどんな危機でも回避出来るわね。でも過信しすぎないで」
「というと?」
「発動した感覚がなければ任意に発動できるとは言い切れないもの。条件もあるかもしれないわ……だから無理な行動は控えたほうがいいってことよ」
単に俊司が初めて使用したため扱えていないだけならなんとかなるだろうが、もし確実に任意発動は無理ならふとした事が命取りになる可能性もある。それに一見すればチート能力にも見えかねないが、そんな能力が幻想郷に存在する可能性はほとんどないはずだ。必ず発動するための条件もあるはずだと紫は言いたいのだ。
「……わかりました」
俊司も彼女の言ってることは理解していたようだ。それに有頂天にならないようにしているらしく、浮かれている様子はない。それどころか自分に喝を入れてるようだった。
「でもまあ……助けてくれてありがと」
そう言った紫はさっきと違った自然な笑みをしていた。俊司はそんな紫を直視できず、恥ずかしそうに目をそむける。そんな彼を見ながら紫はくすくすと笑っていた。
「じゃあ、行きましょうか」
「行くって……どこにですか?」
「仲間のところよ。あと私のことは『紫』って呼んでもらってもかまわないわ。敬語もいらないし」
「え……じゃあ、よろしく紫」
ぎこちないため口でそう返すと、紫はにっこりしながら「ええ」と返してくれた。これだけ力のある妖怪と敬語なしでしゃべるなんて、なんとも言えない変な気分になるものだ。
そんなことを考えていると、紫は面白そうな顔で右手をかざした。なにかどこかで見た感じのそのそぶりは、俊司の脳内に幻想郷へ飛ばされる直前のシーンを思い出させる。しかし苦笑いをする彼に見向きもせず、紫は例の物を俊司の足元に作り出す。
そして彼の足元からまたしても地面の感覚が失われた。
「だからいきなりやるのはあああああぁぁぁぁぁぁ……」
手足をバタバタさせながら落ちて行く俊司。そんな彼をニヤニヤとして見ていた紫だったが、ふと何を思ったのか次第にニヤニヤが苦笑いに変わっていった。
「おもしろいからやってみたけど……やっぱ大丈夫かしら」
そんな事を呟きながらも、静かにスキマの中に入っていく紫だった。
俊司がスキマに落とされていたころ、幻想郷のある場所にはこの世界では珍しいコンクリートで作られた大きな建物が建っていた。周囲には外壁も設置されており、いたるところに設置された見張り
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