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東方守勢録
第五話
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った瞬間彼の足もとに設置されていた魔方陣がくっきりと姿を現す。その後耳がはちきれるくらい甲高い音と共に、目を開いてられないほど眩しい光が辺りを埋め尽くした。
「しまっ……」
 目をつむるだけでは光を抑えきれず、手を使ってなんとか目のダメージを少なくする俊司。しかし数秒間は目を開いても何も見えそうにない。
 それから視界が元に戻った時、彼の目の前からクルトの姿は消え去っていた。周りを見渡すがどこかに隠れている様子はない。本当に逃げてしまったようだ。
「くそっ!」
 俊司は手を強く握りしめ自分の不甲斐なさに対する苛立ちをあらわにさせた。だが周りから見れば、初戦闘にしては相手を追い込むまでいけたのだからよくやったと思えるくらいだ。
 とりあえず持っていたハンドガンをホルスターにしまうと、拘束から解放されせき込んでいた彼女のもとに駆け寄った。
「紫さん!大丈夫ですか!」
 幸い紫はあれだけきつく締め付けられたというのに骨折の一つもしていなかった。木には触手の後がくっきりと映り込んでおり、少し力を加えたら倒れてしまいそうだ。
「ゲホッ……ええ……大丈夫よ。それにしても……ひやひやさせるんだから……」
「ちょっとした約束みたいなもんで……すいません」
 約束とは言えど死を覚悟したのだ。さすがに申し訳なく感じた俊司は、深々と頭を下げる。そんな彼に紫は「そこまでしなくていい」と言って顔を上げさせると、優しそうな笑みを彼に送った。
「約束ねぇ……まあいいわ。おかげで助かったんだもの」
 紫はまだ言うことを聞きづらい体に鞭を入れ無理やり起こすと、落ちてあった日傘を拾い上げ差し始める。
「それにしても……さっきのは何だったの?」
「ああ、あれは……」
 俊司はとりあえず自分の身に起こった事を事細かに説明した。死ぬ直前に時間が止まり、なぜか自分だけが動ける状態で彼に攻撃を加えることができたこと。さらには浮かび上がった光る物体についてもきちんと伝えた。
「時間が止まった……光るなにか……ね」
「はい。もしかして……能力……ですか?」
 これだけの状況を考えると幻想郷にある特殊能力と考えるのが妥当だろう。幻想郷の住人が全員特殊能力を持っているわけではないが、能力が開花するのは珍しいというわけでもない。さっきクルトが能力はこの世界に来てからと言っていたように、俊司が幻想郷の空気に触れて能力を開花させてもおかしくはないのだ。
「……おそらくね。名付けるとしたら『危機を回避する程度の能力』かしら」
「なるほど……確かにそう考えるとあってるかもしれないですね」
 単に時間を止めているわけでもないし、別に特別な攻撃をしようとしたわけでもない。ただ死を回避したというのであれば、紫の言うとおり『危機を回避する程度の能力』と言うのが適切なのだろう。ただ能力は
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