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東方守勢録
第四話
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が広がっていた。
「……え?」
 彼の目の前に浮かんでいたのは、金属らしい光沢を持ち先端が丸く整えられた鉛玉。紛れもなくクルトが発射したはずの弾丸だった。コースもきちんと俊司の眉間一直線となっており、即死は確定しているだろう。
 問題はその弾丸が眉間に到着する前にピタリと止まっていたことだ。別に俊司が何かをしたわけでもないし、クルトや紫が能力を使ったわけでもない。理由もわからずただ呆気にとられることしかできなかった。それに止まっていたのは弾丸だけではない。こっちを軽く睨んだまま銃口を向けるクルトや、目の前の惨劇に目を丸くしたままの紫でさえ動こうとはしなかった。
(時間が止まったみたいだな……咲夜さんか? ……違う。咲夜さんなら俺も動けないはず……)
 ゲーム内の登場人物に『十六夜咲夜』という人物が存在する。彼女なら時間を止めたり速さを変えることができ、現状を作り出すことも可能なはずだ。しかしその場合ならわざわざ俊司を動かす必要性もないし、それ以前に彼女が都合よくこんな場所に現れるとは思えない。
 ここに来てからぐちゃぐちゃになりっぱなしの思考を無理やり整えながら、俊司は周りを調べるために歩き始めた。
(……どういうことだ……俺は死んだからか? ならなんで……ん?)
 そんなことを考えながら歩いていた俊司は、ある場所を見た瞬間その足を止めた。その場所と言ってもさっきまで俊司が死を覚悟して突っ立っていた場所なのだが、そこにはなぜかさっきまでなかった物体が浮いていた。球体状の物体は微弱な光を発し、まるで何かのポイントを表しているかのようだ。
(ボール……じゃないか、別の何かだな。それにあれは……文字?)
 近寄って光る物体をよく見てみると、その上には一センチほどの小さな文字が浮かんでいた。光を発しているために顔を近づけないと非常に読みずらい。俊司はゆっくりと顔を近づけると、その文字を呟くように読み上げた。
「デッド……ポイント……?」
 一度目をこすって再度確認してみるが紛れもなくそう書かれている。俊司はさっきまでの状況を考えてみると、この点が伝えたいことが大体把握できていた。
(つまり……ここにいれば死ぬ。もしくは死んだのどちらか……なら……あとは……)
 俊司は何を思ったのか急にあたりを見回し始める。その仕草はまるで何かを探しているみたいだ。
 やがてある場所を見たとたん、俊司の顔には自然と笑みがこぼれていた。
(思った通りだな。俺はまだ……死んでない)
 それを見つけるなりその場所に駆け寄ると、静かにうなずいてそう確信した。自分がまだ死んでいないという喜びと、決断は正しかったという安心感に思わず安堵の溜息を漏らす。

そこに浮かんでいたのは、さっきと同じ光る何かと文字だった

(アタックポイント……さっきと違うってこ
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