第四話
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ええ〜あれがいいんだよ!」
幼馴染の少女はなぜか不満そうにそう言った。
「確かに最後主人公が死んじゃうのはいやだけど、自分の正義を貫くってすごいじゃん」
「それは同感だけどさ」
そう言ったものの、当時の俊司にとってこの主人公が死を選んだことを理解できてはいなかった。もし自分だったら絶対に死にたくないという理由だけで裏切りを選択してしまうかもしれないと思ったからだ。
「でしょ! まるで俊司君みたいだよね」
そんな事を思っているとは知らず、目の前の幼馴染はそう言った。予想外の発言に俊司は一度言葉を失うも、呆れた顔をしながら話を続けた。
「俺? それはいくらなんでも違うと思うけどな……」
「そうかな私にはそう見えるよ?だからいつまでも変わらないでよね……俊司君」
幼馴染の女の子は笑顔を見せながらそう言った。
「そうだよな……変わらないほうがいいよな由莉香」
過去の回想を終えて戻ってきた俊司は、なぜかはわからないが自然と思考も落ち着いていた。決心を固めた様子できちんと前を向き呼吸を整えていく。そんな彼に気付いたのか、クルトも再び照準を合わせ直し問いかけた。
「さて?答えは出たかい?」
「ああ」
今だからこそあの物語の主人公の気持ちがわかる。少し形は違うものの、同じ様な場面・選択肢に直面した自分が何を考えていたことが、あの場面に合わせても同じように考えていただろう。
恐怖で少し手が震えている。俊司は無理やり押えこんで震えを止めると、クルトを睨みながらこう言い放った。
「お前とは一緒に行かない!……行くならここで死ぬほうがマシ!」
予想外の発言にクルトは一瞬呆気にとられているようだった。それに彼だけでなく紫も痛みすら忘れて目を見開いている。
俊司は自身にこれでいいんだと言い聞かせ、死に対する恐怖を少しでも和らげようとする。無理やり押えていた手の震えももう止まることはなかった。
「そうか……それは残念だ」
クルトは溜息をつくと、軽くずれた照準を彼の頭に合わせ直す。逃げようともしない俊司に声をかけようとする紫だったが、痛みで声がかき消され彼には届いていないようだった。死期を悟った俊司は静かに目を閉じる。
その数秒後、乾いた発砲音が森の中を駆け巡った。
(……あれ?)
発砲音から一・二分が経過しただろうか、俊司は今だ来ない痛みとはっきりしたままの意識に疑問を抱き始めていた。脳を撃ち抜かれ痛みを感じる前に死んだにしろ、意識が残っているのは確実におかしい。
発砲音が聞こえていたのは確実だし、ここにきてクルトが冗談を言ってるわけではないはずだ。ただならぬ何かを感じた俊司は、恐る恐る目を開け確かめようとする。
そこにはさっきまで死を覚悟していた自分をわせれさるほど、目を疑うような世界
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