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東方守勢録
第三話
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 幻想郷には能力で魔法を使う人達が存在しているが、クルトの魔方陣もそれに似た能力の一つなのかもしれない。一概にどう言った能力なのかは断言できないが、魔方陣を設置していることから『設置魔法を操る程度の能力』と推測できる。
 紫は念のため辺りをじっくりと見渡してみる。幸いどこにも魔方陣のようなマークは見当たらなかった。
「お察しの通り……では、先に攻撃してきたのはそっちですから……遠慮なく」
 クルトは右手を前で掲げるとまた青白い光を放つ。その中では彼の手が何かを動かすかのようなそぶりを見せていた。
 しかし数秒たっても何も起こらない。さっきのような防御魔法が発生するわけでもなく、弾幕のような攻撃魔法も発生していなかった。
 疑問に思った紫は警戒心を少し解いてしまう。そんな彼女を見ながらクルトは不敵な笑みを浮かべていた。
「なにも起こらないじゃな――」
「 紫さん! 左!!」
「えっ……!?」
 紫はあわてて俊司の指さす方向に視線を向ける。そこにあらわれていたのはうっすらとした魔方陣のようなものであった。微量の光を放ちながら徐々にその光を大きくしていく。
 その後魔方陣は光を思いっきり放出させると、光の中から何本もの青白く光る触手を放出させた。出現した触手は一瞬ピタリと止まったかと思うと、奇妙な動きをさせながら紫達めがけて一直線に向かってくる。
「くっ!」
 紫はスキマを三つ展開させると、なかからさっきとは比べ物にならない量の弾幕を放出していく。放出させた弾幕はうまい具合に触手にぶつけ、きれいに相殺させていった。
 しかしすぐに収まると思われていた触手攻撃も、何分経っても途切れる気配すら見当たらない。紫にとって弾幕を放出させるくらいなら別に大したことはないが、予想以上の攻撃に集中力がだいぶ持っていかれていた。
「いつまで……続くの……」
 思わず口から漏らしてしまう紫。するとクルトはその発言を待ってましたと言わんばかりにしゃべり始めた。
「そうですねぇ……私の魔法が尽きるか、あなたが尽きるか……彼が尽きるか」
「なっ!?」
「うわっ!」
 突如二人の背後から無数の触手が発生し、さっきのように奇妙な動きをしながら俊司めがけて飛び始める。
 俊司をカバーしようとする紫だったが、スキマを展開させようとした瞬間別方向から彼女に向けて触手が邪魔をし始める。そうこうしている間にも触手は俊司のすぐ目の前まで接近していた。
「ジ・エンドですかね」
 勝利を確信するクルト。しかし、外来人の少年はこんな状態になっても諦めようとはしていなかった。
「くそっ! 外来人だからってなめんなっ!」
 大方の予想を翻し、俊司はまるで外来人とは思えないステップで触手攻撃から逃れていく。いくら文武両道だとは言えど、こんなに早い対応ができるわけがない
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