第3部
サマンオサ
死を操るもの
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
の姿を見た時は幽霊の次に嫌いなものとしてランクインしたと同時に卒倒しかけたが、何度も戦いで見慣れた今では多少の動揺は強いられるものの、戦いに支障が出るほどではなくなっていた。
『ガアアァァァァッ!!』
しかし向こうは完全にこちらに襲い掛かるつもりだ。横で様子をうかがうゾンビマスターに対し、腐った死体は目の前にいる私に顔を向けると、その落ちかけた眼球をぶらぶらと揺らしながらゆっくりとこちらに近づいてきた。
私は後ろ手にランタンを持ち換えつつ臨戦態勢に入ると、咄嗟に星降る腕輪の力を引き出した。
腐った死体が腕を振りかぶり襲ってくると同時に、私は体を捻って避けた。攻撃を躱され、腐った死体は勢い余って体が前のめりになる。このまま湖に落ちるかと思ったが、首だけが突然ぐるりと180度回転し、こちらを向いた。
「!!」
思わず飛び退こうとしたが、ここから離れてしまったらルークが帰って来れなくなる。その間にも腐った死体は体は後ろ向きのまま、私に向かって突進してきた。
「はあっ!!」
その場で体を反らしながら躱し、拳に力をこめると、腐った死体の胸めがけて思い切り正拳突きを放った。
ドゴッ!!
私の一撃で腐った死体の胸板はあっけなく破壊され、胸の中央に大きな穴が開いた。そのあまりにもグロテスクな様相に、思わず顔をしかめる。
だが、その判断が一瞬の隙を作ってしまった。今まで様子を見ていたゾンビマスターが、持っていた杖をくるくると回し始めると、たん、とその杖を地面に突き立てて呪文を放ったのだ。
『ザオラル!!』
??ザオラル!?
その言葉に、私は耳を疑った。確かザオラルというのは、僧侶が使える呪文の一つで、死に瀕した者を蘇らせるという奇跡の技だ。当然僧侶のレベルを相当上げなければ習得できない呪文であり、しかも使えても成功するとは限らない、と以前シーラが言っていた。
しかし、今あの魔物が唱えたザオラルは、見る見るうちに腐った死体の身体を修復させた。完全とはいかないまでもすっかり元の状態に戻った腐った死体は、何事もなかったかのように再び私に向かって襲ってきた。
「こっ、来ないで!!」
ドゴッ!!
近づくなり私の方に倒れこもうとしてきたので、思わず回し蹴りをしながらそう言い放っていた。もともとそれほど強くない腐った死体は、私の攻撃を受け、そのまま力なく倒れた。けれどまたすぐに起き上がり、何度も同じ攻撃を仕掛けてくる。
ああもう、キリがない!!
腐った死体??つまりゾンビというのは、いわば意志を持たない操り人形のようなものだ。操る主の命令に従い、ただひたすら実行する。一度死んでいるので痛覚などもない。何度も襲われるとこれ以上厄介な相手はいないだろう。おまけに隣には倒した仲間を蘇らせる呪文使いがいる。これではいたちごっこだ。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ