第二話
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彼女が『八雲 紫』だといえど、決して理由もなしに幻想郷へ外来人を連れてこようなんてしないだろう。俊司もゲームを通じてだがそのことについては知っていたが、そうなるとなぜ俊司をここに連れてきたのかと言う疑問が残る。
「ええ。じゃあ単刀直入に言うわね?」
紫は表情を一変させ真剣な顔でしゃべり始めた。彼女からでている雰囲気は、明らかにいいことを言おうとしている物ではない。何か嫌な予感が俊司の脳内を駆け巡っていた。
「私たちを……幻想郷を……助けてほしいのよ」
「……はあ!?」
思わず大きな声をあげてしまう俊司。逆に紫はなぜといわんばかりにきょとんとした表情をしていた。
幻想郷トップクラスの実力を持っているはずの『八雲 紫』が、なんの力も持っていない外来人に助けを求めてきたのだ。俊司が度肝を抜かれて驚くのも無理はない。
「まってよ!俺は外来人なんだぞ?特別な能力なんてあるわけないし…」
俊司は自分なりの正論を彼女にぶつける。彼の取り柄と言えば文武両道ぐらいだ。そんな人間ならば、他の高校にもカリスマ的存在を出しながら一人は存在していてもおかしくはない。
「そうね。でも、これから手に入れるかもしれないじゃない?」
しかし彼女は何か確信があるようだった。幻想郷で長年生きている彼女であれば、外来人でも能力を持つ人間がわかるとでも言うのだろうか。
「それは……なにか確信があるのか?」
おそるおそる聞き返してみる。紫は一度鼻で笑った後、なぜか笑みを浮かべたまま素直に答えてくれた。
「私の勘よ」
まさかの発言に俊司は言葉を失ってしまった。
別に能力が開花するわけでもなく、身体的能力も伸びるとかの話でもなく、彼女はただ自分の勘で彼を連れてきたのだ。俊司は心の中で生まれていた期待が、音をたてて壊れていくような気がしていた。
そんな俊司をさておき、紫は話を続ける。
「まあ……あなたのことは別として、助けてほしいのは事実よ」
「でも……おれに幻想郷の人間と戦う能力があるとは思えないけどな……」
「どうかしらね?外の世界ではなかなか優秀な子だって言われてたんじゃないの?」
確かに文武両道を維持するのは並大抵ではできない。それ相応の実力と努力が必要だし、それを続けていくだけの集中力や知識も必要だ。
しかし彼にとってそれは重要なことではなかった。
「それはそうなんだけど……あんなの努力すれば誰でもできるよ」
ようするに誰でも変わることができれば、文武両道なんて簡単にできると俊司は言いたいのだ。それは彼だからこそ……本当の自分を知ってるからこそ言えることだった。
「努力だけじゃ何もできないわ……運や才能も多少は必要。あと心構えとね……だから私たちは……」
そう言った紫は少し俯き、悔しそうな表情を浮かべていた。
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