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東方守勢録
第一部
第一話
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んね?」
 そこにいたのはさっきまで俊司たちを尾行していた女性であった。
 金髪でロングヘアー。おまけに日蔭の多い路地でも日傘を差していて、服装はかなり奇抜で正直にいうとへんてこ。どこからどう見ても怪しい女性が、路地の真ん中で行く手を阻むように立っていた。
 完全に思考が止まってしまった俊司は、ただ呆然と女性を見ている。このとき初めて軽率な考えで路地に入ったことを後悔した。
「……どうかした?」
 何もしゃべらないままの俊司を不思議に思ったのか、女性は笑みを浮かべたまま声をかける。その声でやっと我に戻った俊司は、何も変に思うことなく問いかけに答えた。
「いえ……あの、そこどいてもらってもいいですか?」
「いや……て言ったら?」
「!?」
 女性の言葉は明らかにおかしいと思えるくらい変だった。明らかに常識人ではないし、言動からしてこちらに何か危害を加えようとしているのだろうか。背中に悪寒を走らせながら、俊司はそう考えていた。
「大丈夫よ。別に誘拐とかそんなものじゃないから」
「……」
「あらあら、どうしたものかしら……」
何もしゃべらず固まってしまった彼を、女性は不思議そうに見ていた。警戒心をMAXにして女性がへんな行動を起こさないように警戒していく。女性もそれに気づいているのか、あるいは初々しい反応を楽しんでいるのか、時より面白そうな顔をしていた。
「フフッ警戒してるのかしら?まあ外の世界にはこんな格好してる人なんて……いないものね?」
「なにが目的だ……悪いけど、あんたにかまってられる暇はないんですけど」
「へぇ……」
 試しに強気の態度を見せながらそう言ってみると、女性は何かに感心したように少し驚いた表情を見せた。俊司はまだ落ち着かないままの脳内を無理やり動かし、徐々に思考を取り戻し状況を整理し始める。
(一体なにがしたいんだ……?まったく意味がわからねぇ)
 見た目からしても二十代くらいのきれいな女性だ。三十代から四十代くらいのガラの悪い男や、露出度の高い女が出てくるならまだしも、二十代とこの服装からして犯罪の匂いなんて見受けられない。目的なんてわかるはずがなかった。
「じゃあ、簡潔に用件を伝えたほうがいいのかしら?」
 目的を離さないと考えていた女性だったが、何を思ったのか急に自分からその話題に触れ始めた。簡単に言えるということは、それほど悪いようなことではないのだろうか。内心驚きっぱなしの俊司だが、相手のペースに飲み込まれないよう表情に注意すると、静かに口を開いた。
「……どっちでも」
「そう、じゃあ先に聞くけど私の服装に見覚えはあるかしら?」
(服装?)
 確かに少し奇抜な服装だと思っていたが、気に留めていなかった。と言うよりかは言われて初めてきちっと確認したくらいだ。見覚えがあるかと聞かれ、少し
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