第一部
第一話
[2/4]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
って気持ち悪い世界が広がっている。所々にはなにかの目玉のようなものもあり、つい入るのをためらってしまいそうな世界だ。
「さて……この選択が吉とでるか凶とでるか……どっちにしろこれしか手はない……か」
女性はそう呟くと同時に裂け目の中に入ると、後ろを振り返ってあたりを見渡し静かに裂け目を閉じた。
「俊司!そろそろ帰ろうぜ」
「ん……ああ」
窓の向こうをぼんやりと眺めていた少年は、声をかけられてしぶしぶ席を立つとかばんを手に取り教室を後にした。
少年の名は『里中 俊司』。
周りの少年少女と同じ、市内の高校に通うごく普通の学生である。成績優秀・スポーツ万能で趣味はゲームとサバゲー。数々のスポーツ系大会で優秀な成績を残し、校内だけでなく地元でもちょっとした有名人となっている。本人にとっては別に特別なことをしているわけではないらしく、あまりすごいという自覚はないらしいが。
「いや〜最近お前大会ばっかで……帰り一緒になってなかったよな。」
「ああ。結構いそがしかったしな」
「俺も俊司みたいな能力あればな〜」
「別に得するようなものじゃないけどな……」
うらやましそうな顔をする友人に少し呆れながらも会話を続ける。いつも通りの会話でなにもおかしいところはない。日常と呼べる時間をただ普通にすごしているだけだった。
その後ろでは奇抜な服装をした女性が見ているにもかかわらず。
「じゃあな」
「おう」
いつもの曲がり角で友人とわかれ再び歩き始める。小さいころから見慣れていた住宅地を通り、自分の家へと向かっていた。
(……あれ?)
ふと目をそらした瞬間、視界に入ってきたのはいつもなら気にならないはずの薄暗い路地だった。へんな気分にかられたわけでもないし、もとより路地が好きとかっていう変な趣味を持っているわけでもない。なぜ気になったのかわからず、俊司はその場に立ち止まりその路地をじっと見つめた。
(こんな路地あったっけ……?)
疑問に思いながらも路地の中に入りはじめる。別に少し見に行くだけならかまわないだろうと思っていた。
その背後ではさっきの女性が不適な笑みを浮かべていたいもかかわらず……
路地の中はじめじめとした湿気に覆われているわけでもなく、涼しいそよ風が心地よく流れていた。しかしそれ以外に気に留めるようなものなどなく、ついには行き止まりを示す壁の前に来ていた。
(やっぱ……なにもないよな?)
目の前にある壁を凝視しても、別に路地が気になったという理由なんて見当たらない。不思議そうな顔をしたまま俊司はフゥと息を吐くと、そのまま路地を出ようと振り返った。
「なんでこんなところが気に……!?」
歩き出そうとした俊司はピタリと動きを止めると、驚いた表情で目の前を見つめていた。
「里中……俊司く
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ