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ある白猫の生涯
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 ようやく暖かくなってきて、花も咲いてそれにつられて蝶々とか蜂も飛び回るようになっていた。その日は、その家の住人だけでなく、近所の人だろう何人がが集まってきていた。庭に火を組んでいい匂いがしてきていた。俺も、それにつられて側に出て行ったのだ。

 机の上に置かれているものを見て、俺は本能的にわかっていた。きっとうまいに違い無いと。だけど、その人間達はそれを火の上に乗せているのだ。そんなことをしてぇーと、そのままの方がうまいに決まってるのにー だけど、そんなことを声に出して言えないで、離れて見ていた。

「この猫はウチのノラ猫 外で飼っているの 餌だけあげているのよ」と、その家の住人が言っていた。

 そうしたら、集まってきていた中のひとりの男の人が俺を見て、眼が合った。

「ほれっ 岩 喰うか?」 と、その焼いたものを少し 俺の眼の前に持ってきてくれた。待ってましたと思わず喰らいつくと・・・熱っ・・ それに、せっかくだけど焼いてあるから、噛みごこちが違う!・・・焼かないほうが、きっと、うまいに違いないと思ったが、でも 旨い 食べたことのないようだ。噛み締めていた。だけど、なんで 岩なんだ? 俺はジロのはず・・・。

 でも、その後 「こいつは もっと生のほうが好きなんだよなー」と、軽くあぶったものをちぎってくれていた。

「よなさいよー 虫がわいちゃうからー」と、誰か女の声が・・・

 俺は、そんな やわ じゃぁないわー 生のほうが消化も良いんだよー よけいなことを言うな! と、思っていたら

「そうかぁー 猫って 焼いたもののほうが消化しにくいんじゃぁないのかなー」と、構わず生っぽいものをくれていた。

 そして、俺の頭を撫でて、喉元も触ってくれていた。そんなのは生まれて初めてだった。人間に触られたのって・・・安心出来て心地良かったのだ。そして

「白猫かぁー オスなんだな お前 ここんちのノラ猫なんだってなー ウチに来るか? 岩」

 その人との最初の出会いだったのだ。それに、初めて人間というものに触れた気がしていた。それは おそらく あの黒猫と俺との差なんだろう。あいつは、ノラ猫だからとバカにしているようなのだ。
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