第二章
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「それはまた」
「同じ穀から造った酒でもです」
「造る国が違うとだな」
「そして場所もです」
「違うとだな」
「またです」
「味が違うな」
「そうであります」
こう言うのだった。
「酒は」
「そのこと覚えておく」
帝はその須須許理に笑って応えられた。
「よくな」
「そうして頂きますか」
「そして飲むとしよう」
「そうされますか」
「酒のことがわかったからな」
「日本の酒のことも百済の酒のことも」
「だからな」
それでというのだ。
「これからもよりよい酒を生み出そう」
「美味い酒を」
「飲みつつな」
実際に飲みつつ言われた、そしてだった。
帝は鮭を楽しまれてだった、歌を詠われた。
須須許理が醸みし御酒に我酔ひにけり
事無酒笑酒に我酔ひにけり」
こう詠われた、そしてだった。
外に出られた、この時帝はかなり酔っておられたので歩く支えに杖を持っておられた、そしてだった。
坂道においてだった。
杖を支えにしているとだ、不意にその杖が大石に当たったが。
「帝、石が逃げました」
「杖が当たると」
「そうしましたぞ」
「そうだな」
帝も酔われた中で気付かれた。
「そうなったな」
「これは面白いですな」
「石が逃げるとは」
「杖が当たって」
「これはだ」
廷臣達にこうも言われた。
「大石、堅石も酔った者はだ」
「逃げる」
「そうなのですね」
「そうするのですね」
「そうだ、面白いな」
その酔ったお顔で言われた。
「このことも」
「日本の酒と百済の酒のことといい」
「それにですな」
「酔った者は堅石も逃げる」
「そうなることも」
「実に面白い、酒は面白いことばかりだ」
こう言われてだった。
帝はそれからも酒を楽しまれ続けた、万葉集のまだはじめの頃のことである。日本酒のはじまりは諸説あるが百済からの技術も入ってきていることは事実であろう、そして日本の土や水そして米が日本酒を造っている。このことは確かな事実なのでここで書かせてもらった。これもまた歴史であろうか。
堅石も 完
2024・5・12
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