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一本の杉から
第一章

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                 一本の杉から
 その山の頂上にだ、当時の国司は一本の杉を植えて言った。
「この禿山もな」
「はい、この一本の杉で、ですね」
「禿山でなくなりましたね」
「そうなりましたね」
「そうなった」
 まだ親指程の高さのその杉を見て周りに言った。
「こうしてな」
「そうですね」
「これでそうなりましたね」
「これは何よりですね」
「やがて木が一本また一本と増えて」
 山にというのだ。
「山全体をだ」
「木が覆う」
「そうなるのですね」
「そうなればな」
 それならというのだ。
「いいな」
「左様ですね」
「今は一本ですが」
「一本また一本と増えて」
「そうしてですね」
「緑に覆われたならな」
 山がというのだ。
「最高だな」
「左様ですね」
「やがてそうなれば」
「これ以上はないまでに」
 周りに者達も笑顔で応えた、平安時代の話である。
 そしてそれから千年以上経ってだった、この地面にいる人達は山の頂上のとてつもなく巨大な杉の木を見上げて話した。
「千数百年か」
「長いな」
「凄い長生きの木だな」
「本当に」
「あれよね」 
 地元で暮らしている池澤楓子、短めの髪の毛と穏やかな優しい感じの顔立ちで色白の一六〇位の背の彼女が同じ高校に通うクラスメイトの沖田ミチル黒髪をおかっぱにした明るい顔立ちで自分より二センチ位低くて胸が多少目立つ彼女に言った。二人共青と白のタートンチェックのミニスカートに白いブラウスと紺のブレザーと赤いリボンという制服である。
「あの木昔の国司さんがあの山に最初に植えた木よね」
「そうらしいわね、それでね」
 ミチルは自分の前の席に座る楓子に答えた。

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