第二章
[8]前話
「仕方ないだろ」
「そうか」
「ああ、そうだ」
これといってという口調での言葉だった。
「もうな」
「気にしないでか」
「観てな」
そうしてというのだ。
「楽しむんだ」
「時代劇はか」
「それも楽しみ方だ」
時代劇のというのだ。
「悪徳商人の名前もか」
「越後屋とかばかりでもか」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
「このまま観るぞ」
「金さんをか」
「最後はあれだろ」
祖父は遠山の金さんのこのことも話した。
「金さん悪い奴等に桜吹雪見せるだろ」
「お白洲でな」
「それもな」
金さんがそうすることもというのだ。
「楽しみでな」
「時代劇のか」
「お約束ってあるだろ」
「金さんは桜吹雪か」
「水戸黄門だと印籠でな」
この作品ならそれだというのだ。
「印籠出さない水戸黄門ってあるか」
「そんな話滅多にないな」
「大岡越前だとお裁きでな」
クライマックスのというのだ。
「刀振っての大立ち回りもあるだろ」
「暴れん坊将軍は特にな」
「お約束を観るのが面白いんだ」
祖父は言い切った。
「だからな」
「それでか」
「これからもな」
まさにというのだ。
「悪徳商人の名前に桜吹雪や印籠に大立ち回りをな」
「楽しんでか」
「そしてだ」
そのうえでというのだ。
「楽しむんだ、いいな」
「わかったよ」
孫は祖父の言葉に頷いた。
「それじゃあな」
「ああ、祖父ちゃんもそうして楽しんで観るからな」
「俺もだな」
「時代劇はな」
「そうしたことを楽しんでな」
「観るんだ、いいな」
「そうするよ」
修一は祖父の言葉に頷いた、そうしてだった。
金さんを最後まで観た、クライマックスの桜吹雪は最高に思った。
修一はそれからも時代劇を観てお約束を楽しんだ、だが大人になり子供が大きくなる頃にはというと。
テレビを観てだ、苦い顔で言った。
「バラエティばかりで時代はなしか」
「お父さん好きよね」
「ああ、けれどな」
同居している娘に答えた、娘婿と孫息子の姿も見える。
「今はな」
「時代劇がなくて」
「寂しいものだ、時代劇チャンネル観ていいか」
「いいわよ、最近のテレビ私も面白くないと思うし」
「そうだな、時代劇かけろ」
普通のチャンネルでもというのだ。
「本当にな」
「面白くないバラエティばかりじゃなくてね」
「ああした番組の方がずっと面白い」
娘に憮然として話してチャンネルを変えた。そしてお約束を楽しんだが越後屋という悪徳商人を観て最も楽しんだのだった。
悪徳商人 完
2024・4・14
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