第一章
[2]次話
悪徳商人
その時代劇をテレビで観ていてだ、岩田修一丸坊主で大きな目をした小学五年の彼はこんなことを言った。
「また越後屋か」
「そうだな」
一緒に観ている祖父で同居している郷司が応えた、顔は孫そっくりであるが白髪頭の髪の毛はかなり減っていて一七〇位の身体の背中は曲がってきている。
「今日は」
「最近多いよなこの名前」
「そうか?」
「今金さんだけれどな」
遠山の金さんだというのだ。
「前の大岡越前でもな」
「越後屋だったんだな」
「今は油問屋だけれどな」
この仕事だというのだ。
「前は米問屋だったか」
「よく覚えてるな」
「けれどな」
それでもというのだ。
「同じ越後屋だよ」
「そうなんだな」
「何かな」
孫は一緒にテレビの中で武業と共に楽しそうに悪事を語り合い企んでいる越後谷を観つつさらに言った。
「同じ名前の店多いよな」
「悪い店はか」
「ああ、何でだろうな」
「昔からだからな」
祖父は孫にこう返した。
「もうな」
「悪い店はか」
「時代劇のな、それこそな」
そうした店はというのだ。
「こうしたな」
「何とか屋なんだな」
「ああ、もうな」
それこそというのだ。
「越後屋だの近江屋だのな」
「決まった名前なんだな」
「それこそ金さんでもな」
「大岡越前でもか」
「暴れん坊将軍でも水戸黄門でもそうでな」
こうした作品でもというのだ。
「隠密同心でも江戸の黒豹でもだ」
「同じ名前か」
「そうした名前だろ」
「そうだな」
「時代劇はそんなものだ」
祖父は孫に何処か達観した様に言った。
「祖父ちゃんこの前長七郎江戸日記観たがな」
「俺も観てたよな」
「その時何出てた」
「何か盗人出てたな」
「盗人の連中の名前もな」
これもというのだ。
「治郎吉だの何だのな」
「そうした名前か」
「そんなものだ」
こう言うのだった。
「もう時代劇はな」
「悪い商人の店の名前はか」
「ある程度お約束でな」
そうしたものでというのだ。
「越後屋ばかりでもな」
「いいんだな」
「気にするな」
こう言うのだった。
「いいな」
「そうするんだな」
「気にしてもな」
そうしてもというのだ。
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