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マクーニャのチチャ
第三章

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「待てよ、確か」
「どうしたんだ?」
「いや、当時の酒は」 
 ハンデロに古代インカのそれはと話した。
「噛んでな」
「穀物をか」
「ああ、そうしてな」
「造っていたのか」
「古代の酒はそうして造っていたんだ、噛み酒だ」
 その造り方の名前も話した。
「それでチチャもマクーニャという巫女さんがな」
「玉蜀黍を噛んでか」
「造っていたけれどな」
「まさかこの酒も」
「ご安心下さい」 
 アジア系のインカ帝国の巫女の服を着た若い女性が言ってきた、黒髪に黒い目で彫のない顔立ちが如何にもインカらしく見えた。
「流石に噛んでは」
「ないですか」
「やっぱり」
「今はその製法は不衛生なので」
 そう考えられているからだというのだ。
「ですから」
「それで、ですか」
「ないですか」
「普通に機械を使って」
 そうしてというのだ。
「他のお酒と同じです」
「そうして造っていますか」
「今のチチャは」
「そちらも昔とは違います」
 チチャ即ち酒の造り方もというのだ。
「ですから安心してです」
「飲めばいいですか」
「チチャも」
「はい」
 そうだというのだ。
「そうされて下さい」
「わかりました、それじゃあ」
「いただきます」
 二人もそれならと頷いてだった。
 実際にチチャを飲んでみた、すると。
「美味いな」
「ああ、いい味だな」
「これがチチャか」
「美味い酒だな」
「清潔でな」
 マカーニャは笑って言った。
「そのうえでな」
「美味いな、信仰や文化が復活してもな」  
 ハンデロも言った。
「何かと違うな」
「そうした部分があるな」
「今と昔は違う」
「それはそうしたものでも同じだな」
「生贄もなければ」
「噛み酒もないな」
 二人で笑顔で話した、そしてだった。
 共にチチャを飲んだ、玉蜀黍の酒は古代と現代の味が感じられた。二人はその味を心ゆくまで楽しみそのうえで他の信仰や文化を観ていったのだった。


マクーニャのチチャ   完


                       2024・3・14
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