八十六 元祖・猪鹿蝶
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憧れの火影が自分の実の父親で。
そうしてその火影が信じると言ってくれた。
だから──。
「オレを信じてる父ちゃんの為にも…」
目の前の敵を睨み据える。
ペイン天道の瞳の向こう側にいる本体を見据えながら、波風ナルは仙人モードで構えた。
「そろそろ決着をつけよう…」
近づいてくるペイン天道。
木ノ葉の里で彼に一度捕まった時に提示された問題が、ナルの脳裏に過る。
忍びの世界は憎しみに支配されている。
平和をつくるなら憎しみとどう向き合うか。
「おまえを倒して本体のもとへ行く…!」
ナルの言葉に虚を突かれたかのようにペイン天道は一瞬、歩みを止めた。
「ほう…本体に気づいたか。だが答えを持たぬお前如きが…今さら何を語っても何も変わらん…」
取りつく島もないペイン天道に、やはり道は譲ってくれないか、とナルは双眸を閉ざす。
そんな彼女に追い打ちをかけるように、ペイン天道は冷やかに一蹴した。
「──諦めろ」
けれどその一言を耳にした途端、目尻に紅を引いた双眸が開眼する。
その眼力の強さに、一瞬、ペイン天道は気圧された。
「オレが諦めるのを───」
四代目火影から結局、兄のことを何も伝えられぬまま。
けれど父のたった一言で勇気を貰ったナルはペイン天道との最後の決着をつけるべく、戦闘に再び身を投じた。
「───諦めろってばよっ!」
答えを見つける為に。
そしてペイン天道を操る本体と直接話をする為に。
眼が醒めると、目の前に泣きそうな美少女がいた。
否、白がいた。
女性と見間違うほど美しく成長した青年が泣きそうな表情で懸命に自分の名を呼んでいる。
朦朧とする頭で、女性と見間違えたなどと言ったら怒られてしまうな、とそんなことを呑気に考えた。
「ナ…ト…ナル…ト…ナルトくん…ッ!!」
途切れ途切れにしか聞こえなかった音声がようやく形になる。ようやっとまともに反応し始めた聴覚に、ナルトは浅い息を整えながら、口を開いた。
「……おはよう…」
「……ッ、ナルトくん…っ」
呑気な挨拶で応えたナルトに、ほっと胸を撫で下ろした白の悲壮感漂う顔が途端に崩れる。
泣き笑いのような表情で抱きついた白は、直後、「くる…し」というナルトの呟きに弾かれるように飛び退いた。
慌てて謝罪する白を宥めながら、ナルトは己の腹を見下ろす。
白の氷遁の術だろう。
氷漬けにされることで出血を食い止められている腹部が見えて、ナルトは苦笑した。
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