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犬も善悪がわかる
第一章

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                犬も善悪がわかる
 ふわりは頭がいい、このことは彼女の家族である国崎家の面々が誰よりもよくわかっていることである。
 それでだ、一家の息子でラーメン屋で働いている洋介が母の百合子に言った。
「ふわりっていいことも悪いこともな」
「わかってるでしょ」
「そうだよな」
「だって頭がいい娘だから」 
 今はケージから出て家のテレビをじっと観ているふわりを見つつ話した。
「それでよ」
「やっていいことも悪いこともか」
「わかってるわ、やっては駄目なことを言ったら」
 そうすればというのだ。
「ちゃんとね」
「しなくなるな」
「そうでしょ」
「ああ」
 洋介はその通りだと答えた。
「いつもな」
「一度言えばね」
「わかってな」
「しなくなるわね」
「そういえば悪戯もな」
 そうした行為もというのだ。
「犬によってはよくしてもな」
「それでもよね」
「ふわりはしないな」
「頭がいいだけじゃなくて」
 このことに加えてというのだ。
「性格もね」
「いい娘だからか」
「それでよ」
 そうであるからだというのだ。
「そうしたことはね」
「しないんだな」
「そうよ」
 こう話すのだった。
「ふわりはね」
「そうした娘だよな」
「本当にね」
 洋介にテレビの前でちょこんと座っているふわりを観て話した。
「そうよね」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「やって悪いことはね」
「しないな」
「絶対にね」
「本当にいい娘だな」
「こんないい娘いないわよ、それで犬はね」 
 この生きもの自体の話もした。
「善悪がね」
「ちゃんとつくんだな」
「人と同じでね」
「同じか」
「そう、同じよ」 
 まさにというのだ。
「そのことはね」
「犬も善悪わかるんだな」
「そう、ただ家族は疑わないから」
「ああ、それでか」 
 洋介は母のその言葉を聞いて考える顔になって述べた。
「あの二人信じたんだな」
「前の飼い主達のね」
「そうなんだな」
「純粋だから」
 犬はというのだ。
「だからね」
「それでか」
「信じてね」
「愛情持っていたんだな」
「善悪はわかるけれど」
 それでもというのだ。
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