第3部
サマンオサ
これをデートと呼ぶかは以下略
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おり、まるで水晶で出来た湖のようだった。
その美しい光景に、私たち二人はしばし見入っていた。
「湖だ。それにしても随分綺麗だなあ」
「確かに神秘的な感じがするね」
近づいて湖の様子を覗いてみると、はるか遠くに水底が見える。前に訪れたノアニール近くの洞窟でみた湖よりもさらに透明度は高く、まるで高い崖の上にいるような気分だった。こんなに水深が深ければ、もし湖に落ちてしまったら上がってこられない自信がある。
ルークはこの湖の水の青さに見惚れているようだが、泳げない私にとっては感動よりも恐怖の方が勝っていた。海で溺れかけたこともあるので、余計こういうところには近づきたくない。
「こんなに綺麗な湖なら、観光するのに最適かもね」
「観光?」
予想外のルークの言葉に、私は思わず間の抜けた声を出す。
「サマンオサだと、こういう自然の景色ってなかなか見れないからさ」
その言葉に、ルークと行った殺風景な公園を思い出した。確かにサマンオサに住む人にとっては、こう言った自然の風景は珍しいのかもしれない。
「それじゃあ今私たちは、二人で観光してるってことだね」
「え!? あ、うん……、そうだね」
皮肉交じりに言ってみたが、なぜかルークは微妙な反応で返した。
「どうしたの?」
私に指摘され、なぜかルークは表情を隠すように手で口を抑えた。
「いや、二人でって言うからさ……。それって『観光』より、どっちかと言うと『デート』みたいだよね」
「デート!?」
あまりにも別次元な言い回しに、思わず声が裏返ってしまった。
「いやいや、こんなに沢山の魔物に遭遇するデート嫌だよ!?」
「あー、うん、そうだよね、ごめん。今のはなかったことにして」
一体ルークは何を言っているのだろう。深夜に汗とホコリまみれの中、空腹状態で魔物を倒しながら洞窟の湖を見るなんて、そんなの絶対デートとは言えないではないか。
「そんなこと言うけどさ、そもそもルークはデートしたことあるの?」
少し棘のある言い方でルークに問うと、彼は大げさなくらいに首を横に振った。
「まさか!! デートどころか彼女すら出来たことないよ」
「え、嘘!? いてもおかしくなさそうなのに!」
「仕事しかしてなかったから、そんなこと考える余裕もなかったなあ」
ユウリが近寄りがたい美青年だとしたら、ルークは人当たりの良い好青年という感じだ。どちらも負けず劣らず異性を虜にしそうな魅力を持っているのに、当の本人たちはあまり興味がないように見える。
「そっかあ……。でも、ルークのことが好きな女の人もいると思うよ。だってこんなにかっこいいもの」
何の気なしに言ったが、一瞬気まずい沈黙が走った。
「……ならその女の人の中に、ミオは入ってるの?」
「へっ!?」
「……いや、何でもない」
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