第三部 1979年
戦争の陰翳
苦境 その1
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い。
大所高所の視点に立てば、カリーニングラードのポーランド割譲は受け入れるべきである。
元の世界であったように、いずれEUの権益がバルト海を覆うようになったとき、カリーニングラードの問題は欧州統合の足かせになる。
バルチック艦隊の拠点は、NATOの脅威となる。
数百年にわたり、血みどろの戦争を続けてきたドイツ・ポーランド国民にとって、カリーニングラードの問題は簡単ではないかもしれない。
だが、現代の蒙古の版図を受け継ぐ赤色帝国、ソ連の脅威を前にして、その様な小異は捨て去るべきではないか。
思えばEUもNATOも反ソ、反露の理念があってこそ、成り立つ同盟。
今、極東が平穏無事なのは、中共も反ソで日米と妥協しているからではないか。
米国が、中共の東トルキスタンとチベット併合を黙認したのは、ソ連の脅威を減らす節があったのではないか。
無論、1950年代の国務省内部には多数の容共人士がいた影響もある。
あの悪名高い容共の支那学者、オーウェン・ラティモアなどは、アルジャー・ヒスと違い、刑務所にすらいかず、米国政府の職を退いた後、英米の大学教授の職を渡り歩き、悠々自適の生活を送ったではないか。
あのラティモアのせいで、日本は先の日支事変で苦しめられた事か。
ラティモアも、ヒスも元をたどれば、太平洋問題調査会という伏魔殿の出身。
あの伏魔殿を支援したのは、米国有数の石油企業……
1944年以前の歴史が同じ世界ならば……
いや、ミュンヘンオリンピックが開催された1972年まで同じか……
どちらでもよいが、いずれは米国の裏にいる真の敵と戦わざるをえまい。
第一次、第二次大戦を引き起こし、戦後の冷戦構造を作り上げた闇の紳士たち。
前世で冥王計画などという自分のクローン人間同士を戦わせるという人形遊びに逃げた自分を叱りたいものだ。
今生によみがえったからには、やはり世界征服こそ実現せねばなるまい。
一旦マサキは、深い沈潜の底から意識を呼び戻す。
そして、己の心を静めるかのように、紫煙を燻らすのであった。
夕刻、マサキは総理夫妻主催晩餐会が開かれている赤坂の迎賓館に来ていた。
この場所は紀州藩の赤坂屋敷があったを政府が接収し、洋風の建造物を建てたものである。
1867年以降の歴史が全く違うとはいえ、同様の建物が赤坂に立っているという事実に何かしらの因縁を感じた。
空想作品でいうところの、因果律や歴史の修正などが起きているのではないか。
だとすれば、後に起きるバブル崩壊や1997年のアジア通貨危機も避けられないのだろうか……
金モールのついた礼装をまとい、華やかな雰囲気の中にいるのにもかかわらず、マサキの気分は暗かった。
所詮、どうあがいても、今の俺のしていることは蟷
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