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冥王来訪
第三部 1979年
戦争の陰翳
苦境 その3
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を受けた人物の一人が、ルメイであった。
彼は1961年のキューバ危機の際、キューバ軍のミサイル基地に大規模な空爆を検討した人物であった。
この提案はケネディによって否定され、キューバ危機は回避されるのだが、詳しい話は後日ご紹介したい。

 首脳同士の結論の出ない話を聞いていたのに飽きたマサキは、会場から抜け出していた。
人目をはばかるようにしてアイリスディーナを連れ出し、中庭に来ていた。
 周囲に誰もいないことを確認した後、アイリスディーナに声をかけた。
呆然としている彼女の傍まで来ると、何時も如くタバコに火をつけた。
「アイリスディーナ、どうしたんだ。浮かない顔をして」 
「ええ……」
 アイリスディーナは、一瞬戸惑ったような表情になる。
しかし、困惑を隠すように無表情になると、マサキの胸にしなだれかかってきた。
「平和のためとはいえ、大量の核戦力が必要なのでしょうか」
 アイリスディーナの表情に、たくらみは見えない。
まるで子供が、無邪気に質問の答えを求めている。
そんな風だった。
「戦争に勝つためには、仕方がないという事で作ったんだろう」
「国土を守るためなら、BETA由来の超兵器も仕方がないというんですか」
 アイリスディーナの(おもて)に、わずかに怒りの色が見られた。
マサキは彼女のそんな表情を見ながら、少し動揺した。
「おい、おい、何をそう怒っているんだ?
日本は、常に敵国から狙われている。
何時、強力な兵器を持った侵略者が攻めてきてもおかしくない……
そういう時のために超兵器の一つ、二つがあった方が、まず心配がない」
 アイリスディーナは、マサキにじっと眼を注いだまま、ふっと大きなため息をついた。
目が愁いを帯びたかのように、わずかに潤んでいた。
彼女の悲憤が、マサキにそのまま伝わってくるかのような、優艶な表情だった。
「侵略者がそれ以上の武器を持っていたら……」
 マサキは、そっと煙草を灰皿に置くと、両手で彼女の両手を包んだ。
体から火山流が湧き出るように、急激な興奮が高まりつつあった。
「それを、凌駕する超兵器を作ればいいだけさ」
 全身を痺れるような感覚が走っていく。
アイリスディーナの視線が、マサキを燃え盛らせているのは明らかだった。
「それでは、キリがないじゃありませんか。
まるで、終わりのないマラソンを続けているようで……
いつかは、血を吐いて倒れる悲壮なマラソンです」
 アイリスディーナは、じっとマサキの目を見つめながら言う。
その瞬間、マサキには彼女の目がきらりと輝いた気がした。
「そんな事を続ければ、何時か、何時か、この国も血を吐いて倒れてしまうでしょう」
 アイリスディーナの頬は、薔薇色に染まっていた。
何とも言えない、婉麗な表情になっている。
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