第一章
[2]次話
宝くじに当たる確率で
子安克哉は俗に天才と呼ばれている、それは音楽においてであり数多くの名曲を作曲してきている。
ジャンル問わず無数のヒット曲があり彼は天才と呼ばれていた、だが彼はよくこんなことを言っていた。
「僕は運がいいだけだよ」
「運ですか」
「そうだよ」
穏やかな細い目と薄い唇が印象的な面長の顔で述べた、茶色の髪の毛は長くして中背で痩せた身体である。
「ただね」
「そうなんですか」
「それこそ」
こう言うのだった。
「宝くじに当たった」
「それだけの幸運ですか」
「そうだよ」
まさにというのだ。
「そうであってね」
「それで、ですか」
「別にね」
これといってというのだ。
「凄いとはね」
「思われないですか」
「そうだよ」
「あの」
笑って言うだけの彼にだ、人は言うのだった。
「それは違うと思います」
「僕は運がいいんじゃないっていうんだ」
「はい」
そうだというのだ。
「これが」
「じゃあ何かな」
「何かっていいますと」
それはというと。
「天才です」
「よくそう言う人がいるね」
「実際にジャンルを問わず」
そうであってというのだ。
「数多くの作曲をしている」
「天才っていうんだ」
「はい」
そうだというのだ。
「そう思いますが」
「いや、若しだよ」
子安はいつもここでこう言った。
「仮に才能があっても」
「音楽の」
「音楽に限らず」
それだけでなくというのだ。
「どんな分野でもね」
「音楽に限らないで」
「どんな分野でも才能があっても」
例えそうであってもというのだ。
「その才能を発揮出来るか」
「それは、ですか」
「わからないよ」
「そうですか」
「ほら、宝石だって沢山の石の中にあったら」
普通のというのだ。
「わかりにくいね」
「確かに」
「誰だって何かしらの才能があって」
そうであってというのだ。
「発揮出来たらね」
「それが出来たらですか」
「凄いけれど」
それでもというのだ。
「発揮出来るかどうか」
「そのことはですか」
「本当にね」
まさにというのだ。
「わからないから」
「運ですか」
「運というか運命というか」
そうしたというのだ。
「そんなもので」
「才能を発揮出来たらですか」
「運がいいよ、そして僕はね」
「音楽の才能がですか」
「たまたまあったかも知れなくて」
そうであってというのだ。
「発揮出来ている」
「そうしたですか」
「運がいい人だよ」
「そうですか」
「しかもその才能が」
子安はさらに話した。
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