第一章
[2]次話
夜間大学がある
高卒で工場で働いている江頭宏樹は鍵爪型の眉にきりっとした目に引き締まった顎と頬を持っている。黒髪は短く癖がある。背は一七五位で引き締まった体格だ。
その彼が妻の幸恵に家の中で言った。
「仕事で管理職になるのに資格いるって言われたけれどな」
「そうなの」
「それでな」
茶色がかった長い髪で小さな顔に大きな黒目がちの目と細い眉を持つ一五五位の背でスタイルのいい妻に言った。
「その資格が大学じゃないとな」
「取れないの」
「そうした資格なんだよ」
「そうなの」
「ああ、俺も出世したいかって聞かれるとな」
そうすると、というのだ。
「やっぱりな」
「したいわよね」
「ずっと頑張って来たしな」
会社でというのだ。
「だからな」
「管理職になりたいわね」
「けれどな」
それでもというのだ。
「大学か」
「あなた高卒だしね」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
「どうしようかってな」
「考えてるのね」
「今な」
そうだというのだ。
「どうかってな」
「それならね」
妻はここでこう言った。
「大学行ったら?」
「いや、それはな」
大学を薦められてだ、夫は妻に返した。
「俺働いていてな」
「家庭もあるし?」
「お前にな」
妻を見てだった、そして。
母親そっくりの二人の娘の風子、赤子だが母親そっくりの顔立ちである彼女を見てそのうえでまた言った。
「風子もいるしな」
「いや、お昼だけじゃないでしょ」
暗い顔になった夫に言った。
「大学は」
「夜間大学か」
「そうよ」
まさにというのだ。
「それがあるでしょ」
「そういえばそうか」
「だからね」
それでというのだ。
「夜間大学にね」
「行けばいいか」
「ええ、どうかしら」
「そうだな」
夫は妻のその言葉に頷いた。
「それじゃあな」
「ええ、それじゃあね」
「受験勉強はじめて」
「大学受験するわね」
「夜の方のな」
「頑張ってね」
「ああ、大変でもな」
ここで宏樹はこうも言った。
「働きながら大学行くのは」
「それはね」
幸恵も否定しなかった。
「資格取られるならね」
「俺がそうしたい様に」
「いいから」
だからだというのだ。
「頑張ってね」
「そうするよ」
宏樹は幸恵に言ってそうしてだった。
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