第104話 憂国 その4
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とを考えていると、ようやく一人目の弁士が演説を終え、少ないながらも拍手と歓声が沸き上がる。オペラ歌手もかくやといった怪物の演説に比べれば抑揚に乏しく、声量とパフォーマンスで盛り上げてると言った感じで、内容が全く頭の中に残っていない。確かにこれでは勝負にならないだろう。思わず出た欠伸に、ソーンダイク氏も小さく肩を竦めていた。
次に登壇した弁士はブラウンの髪をした若い女性。この会場の大学の講師らしい。遠目に見てもなかなか整った顔をしていて、前の方に座っている先程のボンボンや女子学生達が気勢を上げている。講演会というよりはアイドルのステージだなと思っていると、それとは別に騒ぎ声が会場の出入口の方から聞こえてきた。
既に時刻は二一時を回っている。迷子になった酔っ払いが冷やかしにでも来たのかなと思って生暖かい視線をむけると、かなりの数の男達が周りを威圧するような動きをしながら会場に入ってくるのが分かる。
確かに彼らは酔っ払いだった。ただし酒ではなく、自らの信じる正義と暴力に酔っている奴ら。
「我々は真に国を愛する憂国騎士団だ!! 我々は君達を弾劾する!!」
鉄色の戦闘服に身を包んだ骸骨マスクメンの、品性も欠片もない音量だけが大きい前口上が、文字通り聴客の乏しい会場を揺るがすのだった。
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