第133話『文化祭2日目』
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してカーテンが捲られたその瞬間、時が止まったかのような錯覚に陥った。
「ど、どうかな、ハルト……」
そこに立っていたのは、ウェディングドレスを身にまとい、少し化粧も施した結月の姿だった。全身が雪のように白く染まる中、蒼い瞳と紅い頬がいつも以上に際立っている。
どれくらいの時間見つめていただろうか。数秒、あるいは数分だったかもしれない。体感ではもっと長い時間惚けていた気がする。
「え、あ……」
気の利いたことを言わなければと、ようやく脳が再起動したが、何も思い浮かばない。いや、言いたいことはむしろいっぱいあるのだが、目の前の絶景に圧倒され、言葉も身体の動かし方さえ忘れたかのように固まってしまう。
「どうしました、旦那さん」
スタッフがにやにやしながら肘でつついてきたところで、ようやく止まった時間が動き出した。
「似合ってるよ、凄く。うん、マジで」
何とか声を絞り出して出た言葉がこれかと、自分の表現力の無さに呆れてしまう。だが、それを聞いた結月は頬を真っ赤にさせ、カーテンの裏に隠れてしまった。
その後は、お互い照れて顔も合わせられないまま写真撮影を行った。終始スタッフ達の生温かい視線を浴び続け、耐えかねた二人は着替えを終えて写真を受け取ると、逃げるように教室を後にしたのだった。
*
午前の自由時間、および文化祭デートは終わりを告げ、午後のシフトが始まった。
「よし、頑張ろう」
大地によると、お店は昨日に引き続き午前中から大繁盛らしい。それこそ整理券を配った程であり、午後はまず整理券を貰ったお客さんを順番に捌くところからである。
「いらっしゃいませ〜!」
男装し、元気に声を上げている結月。恥ずかしがっていたが、さっきの花嫁衣裳を着たことが余程嬉しかったようで、上機嫌に接客している。ただでさえ美男子な結月が笑顔を振りまこうものなら、お客さんが全員虜になってしまうだろう。それは嬉しいようで……少し妬いてしまう。
おっと、そんなことを考える前に手を動かさないと。注文ペースも早いから、厨房は一秒たりとも気を抜けない。
「いらっしゃいま──」
また新しいお客さんが入ったのだと、結月の声を聞いて判断するが、その言葉がパタンと本が落ちたような音と共に途切れる。
異変を感じ顔を上げると、結月が一人のお客さんを前にして硬直し、手に持ったメニューを落としていた。
「結月? どうしたの?」
お店は繁盛し、続々と人の出入りが起こる。だから接客の結月に手を止められては困るのだが……と、結月の視線の先を追って絶句した。
そこには黒いフードを被った生徒がいた。全身を覆うよ
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