第三部 1979年
戦争の陰翳
核飽和攻撃 その2
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はどうですか。
自分は、まだ心構えが……」
副官を務める少年団員の一人が、不安げな表情のまま、中隊長の男に訊ねた。
男は、網膜投射に映る少年兵の方に力ない瞳を向けながら、答えた。
「大丈夫、すぐに慣れるさ」
「はあ……」
少年兵はいささか力の抜けた返事を返した。
「すぐに慣れるさ……」
間もなく彼らは、例の大空洞に近づいた。
ここはルナ・ゼロ・ハイヴの構造物があったところで、事前の砲爆撃で構造物の8割が吹き飛んでいた。
前方には火焔煙や巻き上げられた土埃がわだかまっている。
炎の下は視認できず、何が起きたかわからない。
だが、これまで得られた対BETA戦での戦訓から、はっきりした事がある。
地獄さながらの砲爆撃を浴びても、それだけで敵が壊滅するという事はない事だ。
殊に、BETAは頑強であり、地中に隠れる術に長けている。
ソ連は、中央アジアで血みどろの撤退戦を経験したことがある為、BETAのしぶとさはよく理解している。
不意に前方の丘から土煙が上がった。
丘やクレーターの窪みの中から、多数のBETAが出現した。
その多くは戦車級だが、要塞級や、突撃級が相当数混じっている。
それらが、足を駆り、体を揺すって、土煙を上げ、全速で突進してくる。
距離は近い。
先頭のF4Rと要塞級の距離は、すでに1000メートルを切っている。
「全車、停止!」
この直前まで移動していた戦術機の部隊は停止した。
突っ込んでくる戦車級や突撃級に、57ミリ支援突撃砲の標準を合わせる。
バラライカの20ミリ突撃砲が、突っ込んでくるBETAに狙いを定める。
「火線を開け!」
「撃て!」
号令と共に、各機のパイロットが引き金を引く。
57ミリ砲の砲口に閃光がほとばしり、強烈な砲声が大地を響かせる。
月面探検車に、跨乗する特別攻撃隊員の全身に衝撃が走る。
外れた弾は地面をえぐり、殷々とした砲声が木霊する。
57ミリ弾の直撃を食らった要塞級は、血しぶきを上げて、爆砕された。
F4Rには、土埃と共に、BETAの血煙がパアっと吹きかかる。
少年団の兵士が水平噴射跳躍で急速にBETAの上空に飛び上がる。
光線級の姿が見えないことから、存在しないと過信したための行動であった。
105ミリ砲弾を雨霰とBETAの大群に浴びせかけ、BETAの進撃を足止めしようとする。
ナパームを食らって火だるまになる要塞級を無視するかの如く、突撃級は遮二無二にソ連軍に迫る。
BETAは、爆砕されても、叩かれても、距離を詰めてくる。
どちらが優勢なのか、少年兵にはわからない。
突然、大空洞の中から火線が上がった。
閃光が闇を切り裂いて、空中に駆け上がり、爆音が轟く。
「
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