第三部 1979年
戦争の陰翳
核飽和攻撃 その1
[1/4]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
ソ連が何故、巨額の資金を投じた東欧諸国を易々と見捨てたのか。
それは、ゼオライマーによる攻撃を恐れたに他ならない。
マサキが日米両政府に公開した木星と土星の核飽和攻撃は、秘密裏にKGBの手に渡っていた。
それを見たチェルネンコ議長は、木原マサキという人物の手によってソ連が核の炎で焼かれるのを恐れたのだ。
そこで、東欧諸国の反乱を放置して、独立させる代わりに、ソ連を守ろうと考えた。
30有余年前の大戦争を知る人物として、核戦争は何としても回避せざるを得ない。
彼らなりに、考えた末の結論だった。
東京サミットを翌日に迎えたこの日、中ソ国境のハンカ湖(支那名:興凱湖)東岸にある別荘にKGB指導部が集まっていた。
これは狩猟好きのブレジネフのために、KGBが立てたアムール虎狩り用の別荘であった。
なおソ連では1956年以降、虎狩りは国法で禁じられていた。
「しかし同志長官、驚きましたな。
東京サミットの座上で、東独のNATO参加を認めさせ、我々を満座の笑いものにしようとは。
全く腐った帝国主義者の走狗らしい卑劣なやり方です」
「黄色い猿をなめてはいかん」
KGB長官は露骨に不快の色を示した。
「我々は、木原という日本野郎に何度も煮え湯を飲まされてきた。
今度の東独議長訪問は単なる偽装にしかすぎん」
「木原とゼオライマーの、次の動きの兆候はないか」
「今の所はございません。
ですが気になることがございます」
「どうした」
「実は……その個人的な情報源から得たのですが……」
「では話したまえ」
「実は、シベリア開発に参加していた八楠社長の会社が事件に遭い、彼が殺されたのをご存じですね」
「不幸な事件だった」
「その事件の現場近くで、木原を見たという話が持ち込まれたのです」
「すると銃撃事件は、木原が関係していると」
「或いは関係ないのかもしれませんが……」
「例のロケット発射は、いつかね」
「来週になるかと……」
「特別部に手配して、明日のサミットにぶつけるように指示したまえ」
「木原の関心を大野と穂積に向けているときに、ロケットを飛ばせ」
「彼らは、KGBの有益な情報源です。
見捨てろというのですか……」
「役に立つ馬鹿はいつでも補充出来る。
だが我等の秘密作戦が日本側に露見した事実の方が危険だ。
我らが進めている新計画が白日の下にさらされてみろ……」
「それこそ、ESP兵士の時と違って、世界各国から非難を浴びる。
穂積の件は、彼もろともその計画は廃棄する」
「どうせ、アンドロポフの手垢のついた工作だ。
代が私に代わった今、そんな危険な作戦は必要なくなった」
「そうよのう、穂積にはサミット会場で死んでもらうこと
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ