第三部 1979年
迷走する西ドイツ
卑劣なテロ作戦 その1
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勝手な真似はさせんぞ!」
男爵は、ちょっとイライラした様子で返した。
外套姿の男は、不気味な笑いを浮かべつつも、男爵の目をねめつける。
「私が冗談を言っていると思うか!
本当に怪我をしたいのか」
飛び出した男の手には、ブルーイング仕上げで、箒の柄に似た木製の銃把が付いた自動拳銃!
モーゼル・シュネルフォイヤーで知られる、M172自動拳銃である。
「何時までも、勝手な真似はさせんぞ」
男爵は、腰のホルスターに手を書けようとする。
そしてもう一人の男の動きを見て、手をホルスターから離した。
「あッ……」
後ろに立つもう一人の男の手には、フォアグリップとドラムマガジンのついた短機関銃。
シカゴ・タイプライターといった通称を持つ、M1928トンプソン・サブマシンガンである。
男爵は、自分の妻に危害が及ぶのを恐れ、止む無く銃を持つのを諦めたのだ。
「手荒いのは我慢してもらおう。
それが、我々の務めだからな」
その内、物音に気が付いたマサキがドアの向こうから出てきた。
途端にあきれ顔になったマサキは、こう言い放つ。
「よせ、そいつらは俺の仲間だ」
その時、ドリスと男爵は顔を見合わせた。
場所を大広間に移して、話し合いが行われた。
マサキの話は、こうだった。
外套姿の男はマサキの仲間で、所要があって自分たちと別行動をしていた。
そして、マサキとキルケの事を迎えに来たという。
事情を知らないドリスと男爵は、彼らを左翼系の過激派だと早合点して、銃を出しそうになった。
マサキが来なかったら、流血の事態は避けられなかったとも……
「ハハハハ、そういう訳だったのか。
そいつは、どうも気の毒にな!」
マサキは、腹を抱えて笑い止まないのである。
むっとした男爵が顔を向けると、マサキはなお笑って答えた。
「さっきは、相当手荒いやり方で入って来たらしいな」
マサキが糺すと、今度はむしろ気の毒になったように、外套姿の男も真顔になっていった。
「いや、どうも申し訳ございません。
実は事情があったのです」
男は、平謝りに詫びいった。
「改めて紹介しましょう。
私は、鎧衣左近。東京から来たビジネスマンさ。
こっちの彼は白銀君だ」
「旦那様、奥様、大変お騒がせしました」
こんどは、ドリスの方がほんとに怒ってしまう。
そしてマサキを、普通の礼儀を知らない馬鹿者と見なした。
「以後、こういう事がないように気を付けてください!」
ドリスの怒りももっともである。
興奮して言う彼女に、笑って答えた。
「まあ、夜に機関銃を持ってくるのは強盗か、左翼のテロリストぐらいだからな。
用心には越したことはないか。フハハハハ」
場面は変わって、西ドイツのボン。
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