第3部
サマンオサ
真夜中の冒険
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とこんなときユウリだったら、「何ボーッとしながら歩いてるんだ、この鈍足」とか毒舌を吐いていることだろう。
――って、駄目だ駄目だ! 今は感傷的になってる場合じゃない!
「ホントに大丈夫? 相当痛かったの?」
「ううん、全然大した事ないから!! ほら、早く行こうよ!」
私は乱暴に目元を袖口で拭うと、先に進むようルークを促したのだった。
「やっと出られたぁ〜……」
延々と地下通路を通り、私たちはようやく出口らしき場所に辿り着いた。跳ね上げ扉を開き這うように外に出ると、そこは何の変哲もない茂みのそばだった。背後には塀が町を取り囲んでおり、無事に町の外に出られたのだとわかる。
雲一つ無い夜空に青白く輝く月は、夜の世界に取り残された私たちの味方をしてくれているかのように、明るく照らしてくれた。果てしなく続く広い草原を眺めながら、私はほっと一つ息を吐いた。
??よかった、まだ時間はある??。
一呼吸し落ち着いたところで、私はナギにもらった洞窟の描かれてある地図を鞄から取り出した。
「ええと、この地図だと、洞窟があるのは町の東側だよね」
これ以上ないくらいざっくばらんな地図だが、他に手がかりがないのでこれに頼るしかない。
「うん。僕が聞いたのも町の東側だから、それで合ってるんじゃないかな」
だが、問題は町からの距離だ。一体どのくらい行けば、洞窟に辿り着けるのだろう。
「ここは町の北側だから、あそこに向かえばいいんだ」
ルークが指さした方角に視線を向ける。その先は丘陵地帯になっており、ここからでは洞窟はもちろん、地図に描かれた木すらも見えなかった。
「きっと洞窟の近くに森か林があるんだよね。あの向こうにそれっぽい場所ってあるの?」
「確かあったはずだよ。ただ、この近くの魔物は厄介な奴が多いんだ」
「厄介な奴って?」
「硬い鎧を着た『キラーアーマー』とか、仮面を着けた『ゾンビマスター』とかかな。まあ、滅多に出ることはないと思うけど」
そう言って気楽に笑うルークの言葉を恨むことになろうとは、このときの私は考えもしなかった。
何故そうなったのか。それは私たちが丘を越えた先にある森へと入り込んだ時に起こった。
森の中は見通しの良い場所から一転、常緑樹の木々が鬱蒼と生い茂り、夜を真っ黒な絵の具で塗りつぶしたかのように真っ暗だった。
そのせいか、とっさに訪れた闇の気配に気づくのが一瞬遅れてしまった。
「??っ?!」
間一髪、私が避けた足元の地面が、鋭くえぐられた。咄嗟に私は戦闘態勢に入る。隣にいたルークもすでに、師匠と同じ武術の型で身構えている。
一瞬の間を置いて、再び殺気が私めがけて襲ってきた。
上空からの気配を感じ取った私は、すぐにその場にしゃがみこむ。刹那、白銀の軌跡が私の頭上を薙いだ。
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