第3部
サマンオサ
真夜中の冒険
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冴え冴えとした月が、すっかり静まり返った古びた街並みを照らしている。
時刻は真夜中。この季節、この地域の気候はやや肌寒い。だが羽織るものが必要なほどの寒さではなく、少し走れば寒さはほとんど感じなかった。
「ミオ、大丈夫?」
前を走っていたルークが振り向いて声をかけてきた。
「大丈夫だよ。私のことは気にしないで」
とは言うものの、体力温存のため星降る腕輪の力は使わず走っているからか、足の長いルークにどんどん引き離されていく。けして私の足が遅いわけではなく、単にルークの足が早いのだ。
さすがにこれ以上早く走ると見失うと感じたのか、速度を緩めるルーク。そばまで近づくと、視線の先を指で示した。
「もう少ししたら、教会が見えてくる。そこの隠し階段が、地下通路の入り口なんだ」
ルークの家を出る前、無断で町の外に出るのは難しいとルークに言われた。町に入るときも門番の人がいてなかなか通らせてくれなかったが、出るときも特別な許可がいるらしい。もちろんそんなものはないのでどうしたらいいかと尋ねたら、この町には昔作られた地下通路があるのだと答えてくれた。その通路は色んな施設に行くために張り巡らされており、町の外にも繋がっているのだという。そんな都合のいい場所なら今すぐにでも行きたいところなのだが??。
「何十年も昔からあるからか、あちこち老朽化が進んでて、いつ崩れるかわからないんだ。魔物もいつの間にか棲みつくようになって、今じゃ地下通路を通る人は殆どいない。それでも行く?」
何を今さら、と言わんばかりに私はルークを見返す。ルークもそれを察したのか、眦を下げて頷いた。
ほどなく、目的地である教会に辿り着いた。夜も更けたこの時間に人が出入りする様子はなく、建物にも明かりはなく真っ暗だった。
ルークは建物をすり抜け、教会の隣にある墓地へと向かった。ルークの家を探している途中に通ったときは、ブレナンさんという人のお葬式が行われていたが、その人のお墓だろうか、墓の前には数本の花と食べ物が手向けてあった。
さらに彼はどんどん奥へ進むと、手入れの行き届いていない古びた墓石の前にしゃがみこみ、地面の砂を払うという謎の動作をし始めた。すると、みるみるうちにその地面に亀裂のようなものが現れたではないか。
「ここをこうして、と……」
その辺に落ちていた細い木の枝を拾うと、ルークは手慣れた手つきで地面の亀裂にその枝を差し込んだ。すると、ボコッと土が盛り上がる音がしたと同時に、木製の扉が跳ね上がったではないか。
「うわっ!?」
「ここから入るよ」
扉の向こうは地下へと通じる階段が奥まで続いていた。だが暗がりの中では奥に何があるかわからない。それでもルークは躊躇うことなく中に入ったので、私も慌てて後に続く。
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