第一章
[2]次話
ベスの部屋
メンフィスに住む老人ハトホルはこの時悩んでいた、それで親しい者にその家を訪問してその悩みを打ち明けていた。
「歳のせいかもうあっちの方がな」
「駄目か」
「そうなってきた」
「あんたも六十でな」
「ああ、四十になった頃からな」
皺が多く細長いその顔で言うのだった。
「どんどんな」
「あっちの方が駄目になってきてか」
「今ではな」
それこそというのだ。
「さっぱりだ」
「しかしあんた若い頃は」
知人はその頃の彼の話をした。
「もうな」
「ああ、毎日な」
「そうだったな」
「しかしそれがな」
「今はか」
「さっぱりだ」
知り合いに項垂れて話した。
「どうもな」
「難儀なことだな」
「しかしな」
それでもとだ、ハトホルは知人に話した。
「折角またな」
「内緒でだな」
「若い妾が来たんだ」
「奥さん公認でな」
「苦い顔をしていたけれどな」
それでもというのだ。
「そうしてくれてな」
「これで妾さん三人目か」
「しかしその若い妾が来てもな」
それでもというのだ。
「肝心のわしがこれでは」
「意味がないな」
「子供もまだ欲しい」
こうもだ、ハトホルは言った。
「だからな」
「あっちの方もだな」
「何とかなって欲しいが。せがれ達が羨ましい」
「息子さん二人だったな」
「二人共子沢山でな」
「あっちの方もか」
「凄いものだ、わしの若い頃そっくりだ」
「そしてあんたはだな」
「若い頃の様にな」
まさにその域でというのだ。
「元気になりたい」
「そうか、それならな」
ここまで聞いてだ、知人は彼に言った。
「ベスの部屋に行けばいい」
「ベス神のか」
「そうだ、あの神様のな」
こう言うのだった。
「そうすればいい」
「そうなのか」
「あそこに行けばな」
そうすればというのだ。
「もうあっちの方はな」
「戻るか」
「そうなるそうだ、行ってみるか」
「無論だ」
ハトホルは即座に答えた、見れば目が期待で輝いている。
「もう今の一番の悩みは」
「そのことだからか」
「もうな」
それこそというのだ。
「絶対にだ」
「ベスの部屋に行くか」
「そうしてくる」
こう言って実際にだった。
ハトホルはメンフィスにあるベスの部屋と呼ばれる場所に行った、すると入り口に巻いた髪と髭を持つ黒い肌で餓鬼を手にした小柄な老人の姿をしたベス神の像があり。
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