第三章
[8]前話
オシリスは実際にハピに会って彼にこのことを尋ねた、すると彼は微笑んで答えた。
「実はです」
「その通りか」
「常に一定では」
川の流れがというのだ。
「それではです」
「人はただ畑を耕してか」
「船を行き来させるだけで」
「それで終わりだな」
「はい、ですが」
それでもというのだ。
「流れが常に変わるなら」
「ナイル川の流れがな」
「人間達はあの川の恵みで生きています」
ナイル川のというのだ。
「ですから」
「その川が変わらないとか」
「常に決まった恵みを得られ」
「災厄という試練もだな」
「ないとです」
「人はあまり動かなくなるか」
「考え動いてこそです」
ハピはさらに話した。
「人はよくなります」
「人がよくなることも促すか」
「恵みだけでなく、ですから」
「そなたは川の流れの量を変えるな」
「常に。しかもです」
「気まぐれにだな」
「はい、ここで量が変わるのも荒れ方も時期が決まっていますと」
そうなると、というのだ。
「人間達も愚かではないので」
「それでだな」
「やはり決まった様にしか考え動かない様になり」
「その分よくならないな」
「ですから私も気まぐれに」
「川の水の量を変えているな」
「ナイルの川は恵みにです」
それに加えてというのだ。
「進歩と発展もです」
「人間達に与えるな」
「それこそが真の賜物ですね」
「その通りだな」
オシリスも確かにと頷いた。
「それは」
「左様ですね」
「そなたの言う通りだ、だからこれまでそうしてきて」
「これからもです」
さらにというのだ。
「そうしていきます」
「ナイルの水の量を変えていくか」
「気まぐれに、これもまたです」
「人間への恵みだな」
「そして真のです」
「賜物だな」
「左様です」
ハピはオシリスに微笑んで話した、そしてだった。
彼はナイルの川の水の量を気まぐれに変えていった、人間達はその気まぐれに対して必死に考えそのうえで動いていった、そうしていってだった。
彼等は進歩し発展していった、エジプトの文明はその結果として長く続き遺産はローマひいては現代にも伝わる。そこにはハピという神の気まぐれな働きがあったのである。古代エジプトから現代社会に続く話である。
ハピの気まぐれ 完
2024・4・13
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