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大きいだけじゃない
第三章
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「正直その胸、大きいわよ」
「そうそう、かなりね」
「大きさって意味で大きいんじゃなくてね」
「もっとね。こうね」
「存在感としてよ」 
 そうした意味で大きいというのだ。
「明子の胸ってね」
「女は胸からはじまるって言うし」
 ルイ十五世の言葉だ。フランス一の美男と言われそれと共に稀代の艶福家としても知られている人物だ。
「もうその胸はね」
「どうしても見ちゃうから」
「というか兵器」
「そうなるわよ」
「そうなの?」
 あまり自覚のない感じの当人の返答だ。
「私はそれは」
「けれど胸のことは自分でもわかってるわよね」
「そのことはね」
「まあそれは」
 否定はできなかった。
「何ていうか」
「でしょ?それでその胸を見てね」
「浩二君も一緒になったんじゃないの?」
「付き合う様になったんじゃないの?」
 浩二のことも話題に出る。
「明子のおっぱいって前から男の子達の間で評判だしね」
「それを考えたら浩二君だってね」
「やっぱり胸だと思うよ」
「まず胸を見てね」
 まさにルイ十五世の言葉のままにだった。
「それで決めたんじゃないの?」
「明子と付き合おうって」
「そこからとか」
「何かそれって」
 浩二が明子の胸を見て交際する様になったと聞くと静かではいられなかった。明子は顔を曇らせてこう皆に言った。
「あまり」
「いい気持ちしない?」
「そうなの?」
「だって。胸だけじゃないじゃない」 
 だからだというのだ。
「中身とか見て欲しくない?やっぱり」
「あっ、それはね」
「本当にその通りね」
「正直付き合うんならね」
「胸とか顔とか脚よりもね」 
 そうした外見よりもだった。
「やっぱり中身よね」
「中身、見て欲しいよね」
「性格ね」
 周りも明子のその言葉に頷く。
「それね」
「それはわかるわ」
「正直私だってそうだし」
「私もよ」
 誰もが言う。内面こそ見て欲しいとだ。
「外面での評価ってね」
「そうそう、うわっつらでしかないからね」
「内面って違うから」
「心を見られるから」
 そのうえでの評価だからだというのだ。
「やっぱりそういうの見て評価して欲しいよね」
「そういうものよね」
「ちゃんと見て欲しいわよね」
「そうしたところね」
 こう話される。彼女達にしても自分の心を見てそのうえで誰かに評価してもらいたい、だからこその言葉も出た。
「女は顔じゃない」
「そして胸だけじゃない」
「そういうことよね」
「やっぱり胸だけじゃないから」
「明子にしてもね」
 その明子もだった。
「性格いいと思うわ」
「おっとりとしてて穏やかでね」
「結構気がつくし」
「親切だし」
「意地悪とかしないし悪口も言わないからね」
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