第二章
[8]前話
「もうすぐ入院するけれど」
「それでもなの」
「ひいお祖母ちゃんはここまで生きられているから」
「幸せなのね」
「何も不幸せって思うことはないのよ」
微笑んで言うのだった、そしてだった。
曾祖母は入院した、だが。
それから暫くして世を去ったがその死因は。
「老衰なの」
「癌じゃなくてな」
「そちらだったわ」
朋子の両親が病院で彼女に話した。
「お医者さんが言われるにはね」
「そちらで死んだらしい」
「それであんたも見なさい」
「ひいお祖母ちゃんのお顔をな」
「わかったわ」
両親の言葉に頷いてだった。
朋子は白いベッドの中にいる曾祖母と会った、するとその顔はとても安らかで微笑んでいた。その顔を見てだった。
朋子も微笑んでだ、両親に言った。
「幸せね」
「ああ、いつも言っていた通りにな」
「ひいお祖母ちゃんそうだったのよ」
「そうよね、考えてみれば色々あっても」
曾祖母の人生はというのだ。
「けれどね」
「それでもな」
「幸せだったのよ」
「だからね」
朋子はさらに言った。
「このお顔をよ、このお顔でいるならお葬式もね」
「ああ、幸せにな」
「行いましょう」
「折角だからな」
「ひいお祖母ちゃんもそうして欲しいでしょうし」
「泣かないでね」
実際に涙は出なかった、今の朋子は。
「笑顔でね」
「送ってあげような」
「そうしてあげましょう」
「幸せだった人は天国でも幸せになるべきだから」
こう考えて言うのだった。
「笑顔でお葬式を進めて」
「最後の最後までね」
「お骨入れる時もよね」
「お食事会でもね、ずっとね」
「笑顔で送るのね」
「そうしましょう」
母とこう話してだった。
曾祖母の葬式の時ずっと笑顔であった、それは家族の誰もがであり。
全てが終わって仏壇に飾られた曾祖母の写真を観てだ、朋子はこの時も母にこんなことを言ったのだった。
「ひいお祖母ちゃん今も笑顔ね」
「ずっとね」
「癌の時もそうで」
「亡くなった時もでね」
「勿論元気だった時もで」
「今もね」
その写真を観て言うのだった。
「元気ね」
「そうね、余命以上に生きられてるだけでね」
「幸せって言ってたし」
「今もね」
「ひいお祖母ちゃん幸せね」
母娘で笑顔で言葉を交えさせた、そうして仏壇の前に座って手を合わせた。今も幸せな曾祖母に対して。
余命以上に生きられたから 完
2024・6・19
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