第3部
サマンオサ
その頃の勇者たち(ユウリ視点)
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だろうが、俺たちが入っていた牢屋を先に見られたら、脱走したことがバレてしまう。
「俺たちは先に牢へ戻る!! お前はそのまま町に戻れ!!」
バカザルの返事も聞く間もなく、俺とシーラは急いで元の牢屋へと向かった。バカザルがいないことがバレたら厄介なので、俺がマヌーサを応用してバカザルの幻影を作り出し、ひとまずは難を逃れた。
それからどれくらい経っただろうか。腹の減り具合からして2時間は経っているが、あのバカは未だに帰って来ない。
「でもさ、案外るーくん2号と一緒に探してるかもしれないね」
「は!?」
思考を遮られた俺は、起き上がりざまに振り向いた。
「どうする? るーくん2号があたしたちと一緒に旅したいです、なんて言ってきたら」
「戦闘の邪魔になるような奴はいらん」
気持ち悪い笑みを浮かべる賢者を、俺はこれ以上余計なことを言うなと言わんばかりに睨み返す。
こういうときのザル賢者は、大抵俺をからかって楽しんでやがる。
「でもるーくんさあ、並みの鍛え方してないよね。きっとあたしよりレベル高いかも」
「……」
頼む。誰かこのおしゃべりな賢者を黙らせてくれ。
「顔も爽やか系のイケメンで、優しくて。さらに包容力があって、いざというときには頼れるくらい強い。なかなかこんなハイスペックな男子いないよ?」
「……何が言いたい?」
自分でもわかるくらい、胸の奥からジリジリと焦げ付くような怒りがこみ上げてくる。いや、これを怒りだけで表すには到底物足りない。
「強力なライバル出現だね、ユウリちゃん」
その瞬間。ぶちっ、と何かが切れる音が聞こえた気がした。俺はシーラに向き直るなり激昂した。
「俺には関係のない話だ!! 次くだらんこと言ったらもう二度と酒場に行かせないからな!!」
「ああっ!! それだけはやめてぇ!!」
半泣き状態のシーラにひとしきり文句を言うと、再び俺は彼女に背を向けて寝転がる。だが、さっきの発言が気になってしまい、眠ろうと思ってもなかなか寝付けない。
あの男といるときのあいつの表情を思い出し、俺は苦い顔を作る。ただの幼馴染みなら、再会しただけであんなに嬉しそうな顔をするものだろうか?
いや、あいつのことだから、たとえどんな相手でも……、例えばその辺のジジイにでも、ああいう反応をするはずだ。
「……くだらん」
そう言い聞かせようとしている自分がなんだかむなしくなり、俺はこれ以上考えるのをやめた。
「明日あいつがここに来たら、慌ただしくなると思う。今のうちに休んどけ」
ぼそりと俺が忠告すると、一瞬の間を置いてシーラが何やらクスクスと笑い始めたではないか。
「何がおかしい!!」
俺は顔だけシーラの方を向いて、眉間にシワを寄せながら尋ねた。すると彼女は、これ以上ないくらいニヤニヤしながら俺を
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