第3部
サマンオサ
その頃の勇者たち(ユウリ視点)
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る俺にこんな鉄格子など全く意味がない。牢屋に入れられてから3秒後に、俺は最後の鍵を使い部屋を出た。
どうやら牢屋は他にいくつもあるらしく、俺たちは看守に見つからないよう別の出口がないかあちこち探していた。驚くことに、俺たちの他に、何人も牢屋に入れられている人たちがいた。しかもその殆どがその辺に歩いていそうな普通の民間人ばかりであった。
だが、看守がいる出入り口とは反対方向へ歩いていくと、一番奥の牢屋が他とは明らかに違うことに気がついた。
古びた鉄格子はかなり年季が入っており、あまり人が行き来している様子もない。明らかに看守に見放されている雰囲気だ。
「なんかここの牢屋だけ他とは違うね。よっぽどの悪人でも捕まってるのかな」
「……もしくは、この国にとって厄介な人物とかな」
俺の言葉に、シーラの眉がぴくりと上がる。何かに気づいたようだ。
「へえ〜、例えば王様の母親とかか?」
唐突に現れたバカザルの答えに、思わず後頭部をぶん殴ろうとした手を止めた。バカザルは何も考えず答えたと思うが、あながちその可能性もなくはない。自分勝手に国を動かせる自分にとって、自分を戒めてくれる存在でもある親の存在は疎ましい場合もある。下手に殺してしまえば、まずは自分が疑われるかもしれない。ならばここは生かさず殺さず、病気で臥せっているという名目で誰の目にも触れることなくずっとこの牢屋に閉じ込めれば、バレることはないだろう。
いや、そんなことをここでいくら考えても埒が明かない。俺はためらわず目の前の扉を開けた。扉はギシギシと軋む音を立てながら、ゆっくりと開いた。
その部屋は案外広く、奥にはベッドがあった。布団の膨らみを見ると、そこに誰か寝ているようだ。
「……誰か、いるのかね?」
俺たちの気配に気づいたのか、布団が動いた。だが、身体を起こす気力がないのか、すぐに静かになった。
ベッドのそばまで近づいてみると、そこには一人の老人がいた。十年間一人で生活をしていたノアニールのジジイよりも、さらに痩せこけた姿をしていた。
しかしそれよりも衝撃だったのは、その顔がこの国の王と瓜二つだったことだ。
「俺はユウリ。アリアハンから来た勇者です。俺たちは旅の途中、国家侮辱罪という罪に問われ、牢に送られました。……あなたと同じ顔の人に」
俺が何を言わんとしているか、相手は俺の顔をじっと見据えながら考えているようだった。
そしてしばらくして、相手の眦から涙が流れ落ちた。虚ろな目をした彼は静かに泣いていた。
「ねえ、おじいちゃん。あなたは一体誰? どうして王様と同じ顔をしているの?」
シーラが涙を流す老人の顔を覗き込みながら尋ねる。老人はひとしきり泣いたあと、ゆっくりと口を開いた。
「私に構うな……。私に構えば、この牢に入れられるだけでは済まない。
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